改訂新版 世界大百科事典 「アメンヘテプ3世」の意味・わかりやすい解説
アメンヘテプ[3世]
Amenhetep Ⅲ
古代エジプト第18王朝9代目の王。在位,前1402年ころ-前1364年ころ。王の治世はトトメス3世が建設したシリア,パレスティナ,ヌビアの植民地支配を軸とする〈帝国〉支配体制の絶頂期にあたる。バビロニア王国やミタンニ王国とは王女との結婚を通じて同盟関係を強化,豊富に産するヌビア黄金の贈与によって,ヒッタイト王国やアッシリアを含めてエジプトを軸とする西アジア世界の国際平和を実現,その状況はアマルナ文書に詳しい。贈物,貢納,交易によって諸国の富が大量にエジプトに流入,豪奢な宮廷生活と大規模な建築活動にむけられる。代表的な建築にルクソル神殿,〈メムノンの巨像〉のみ現存する葬祭殿,マルカタ宮殿がある。王族でないティイTiyの皇后冊立など専制君主的傾向を強め,アテン信仰の育成とともにイクナートンの〈宗教改革〉の道を開く。治世末年にはヒッタイトの進出によりアジアの植民地支配体制も揺らぎはじめる。
執筆者:屋形 禎亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報