日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラセツ」の意味・わかりやすい解説
アラセツ
あらせつ / 新節
鹿児島県奄美(あまみ)諸島の生産暦による新年に相当する行事。奄美大島では旧暦8月の最初の丙(ひのえ)の日。このあとの壬(みずのえ)の日のシバサシ、甲子(きのえね)の日のドンガとあわせ、新八月(ミハチガツ)と総称する。喜界(きかい)島で8月初丁(ひのと)を節折目(シチウンミ)、5日後をシバサシ、徳之島で9月丁卯(ひのとう)または丁酉(ひのととり)をアラセツ、7日後をシバサシとするのも同系統の行事である。この期間は、八月踊があるほか、家に先祖の霊を迎え、墓参りをするなど、先祖祭りの色彩が濃い。穀物の収穫と播種(はしゅ)の中間時期で、そのときを新年とし、死者との宗教的交流が行われたらしい。
類似の行事は沖縄県にもある。八重山(やえやま)列島の6、7月の己亥(つちのとい)の節(シツ)は、「年(とし)の夜(よる)」ともよぶ1年のくぎりの行事で、「後生の正月」ともいう。カヤを忌柴として家屋に刺すシバサシは沖縄諸島にもあり、やはり、この日を1年の終わりとし、「後生の正月」とする。穀物栽培期の切れ目に新年を置く古風な歳時観が、琉球(りゅうきゅう)の行事には生き続けている。
[小島瓔]