アリヅカムシ

改訂新版 世界大百科事典 「アリヅカムシ」の意味・わかりやすい解説

アリヅカムシ (蟻塚虫)

甲虫アリヅカムシ科Pselaphidaeに属する昆虫総称。英名ant-loving beetleの名に示されるように好蟻(こうぎ)性の虫として知られている。いずれも体長0.5~4mmで小さい。赤褐色から茶褐色で上翅が著しく短く,腹部が大きく裸出している。世界から5000種近くが,日本からはおよそ170種が知られているが,そのうちアリと関連があるのは一部のグループである。大多数の種は落葉土壌に生息し,特殊な環境を好むものとして,海浜性,砂地性,洞窟性のほか,アリの巣,鳥の巣にすむものなどがあげられる。アリとの関連は,アリの社会に受け入れられ食物の交換などを行う友好的共生者のほか,無関心共生者,敵対共生者,寄生などに分けられる。友好的共生者としては,コヤマトヒゲブトアリヅカムシなどのヒゲブトアリヅカムシ類Clavigerinaeがよく知られる。この類は触角が著しく先端へ太まり,環節の数が1~6節で少ない。また裸出した腹部の環節は背面が融合して大きな一つの環節に見える。日本からはエグリチイロアリヅカムシ,ダイコクアリヅカムシ,ヒゲカタアリヅカムシの3種が知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリヅカムシ」の意味・わかりやすい解説

アリヅカムシ
ありづかむし / 蟻塚虫
ant-loving beetles

昆虫綱甲虫目アリヅカムシ科Pselaphidaeの昆虫の総称。世界各地に産するが熱帯域に多く、およそ5000種が知られる。日本には約150種記録されているが、実際には数百種以上産するものと推定されている。微小な甲虫で1.5ミリメートル前後の種が多く、体色は黄褐色暗褐色などで、多くは赤褐色。普通、外皮が硬く、後体部が肥大し、上ばねは後方が切断状で腹部大半が露出し、その節は互いに接着して動かせない。触角や小あご肢はとくに雄だけ変わった形になることがある。跗節(ふせつ)は普通3節。朽ち木の皮下、石や倒木の下、落ち葉や腐植土の中、洞穴の中などにすむ。またアリの巣内にいる種もあり、腹背部に毛束があってアリの好む蜜(みつ)を出し、アリから餌(えさ)をもらうヒゲブトアリヅカムシ類Clavigerなどもある。

[中根猛彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリヅカムシ」の意味・わかりやすい解説

アリヅカムシ
Pselaphidae; short-winged mold beetle

鞘翅目アリヅカムシ科に属する昆虫の総称。体長1~4mmほどの微小な甲虫で,体色は普通黄褐色ないし黒褐色。前胸が小さく (頭部より小さい種もある) ,その前後はくびれる。触角は先端数節が太く,いわゆる球桿状で,その形は種によって異なる。上翅が短く,腹部背板が広く露出し,第3節以下が硬化している点はハネカクシに似ている。アリヅカムシ (蟻塚虫) という名であるが,アリと共生する種はあまり多くない。全世界に広く分布し,日本では数十種が知られている。大多数は落葉や石の下,土中などにすむ。

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