化学辞典 第2版 「アルサン」の解説
アルサン
アルサン
arsane
【Ⅰ】水素化ヒ素.AsH3(77.95).アルシンともいう.(1)ヒ化亜鉛Zn3As2に硫酸を加える,(2)ヒ化ナトリウムNa3Asに臭化アンモニウムNH4Brを加える,(3)[As(OH)4]-にテトラヒドロホウ酸カリウムK[BH4]を加え,硫酸で酸性にする,などの方法でつくられる.ニンニク臭の無色の気体.融点-116.19 ℃,沸点-62.5 ℃.1.64.強い還元剤で,硝酸銀溶液から銀を遊離させる.空気中で燃え,炎を冷たい磁器にあてるとAsが黒色のヒ素鏡となって器壁に付着する.非常に強い塩基で,液体アンモニア中で酸性を示す.ガラス容器中で数か月保存可能.悪臭があり,きわめて毒性が強く,溶血作用が強く,赤血球を減少させる.[CAS 7784-42-1]【Ⅱ】AsH3の有機置換体もアルサンという.すなわち,ヒ素の水素化物およびそのアルキル,アリール置換体の総称である(たとえば,(C6H5)3Asはトリフェニルアルサン).一般式AsmHmおよびAsmRm(Rはアルキル,アリール基)で表される.AsH3の置換体のほか,Asが2個以上のAs2H2,As4H2,As2H5などのオリゴマーも知られている.同族の類縁体であるホスフィンのリン原子と同様に,ヒ素原子はピラミッド構造を有し,σ供与/π受容性配位子として遷移金属錯体の安定化に利用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報