日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒ化物」の意味・わかりやすい解説
ヒ化物
ひかぶつ
arsenide
ヒ素より電気陽性な金属とヒ素との化合物の総称。元素どうしの直接結合またはヒ化物を熱分解して一部のヒ素を放出させる。アルカリ金属やアルカリ土類金属とはヒ化ナトリウムNa3As、ヒ化マグネシウムMg3As2などをつくる。水と反応してアルシン(ヒ化水素)を生じるので塩型とみなされる。遷移金属元素のヒ化物は金属的で、原子比が2対1、1対1、1対2のものが多い。砒(ひ)鉄鉱FeAs2、砒コバルト鉱CoAs2、紅砒ニッケル鉱NiAsは天然に産出する。遷移金属は不対電子をもっているから金属原子間の相互作用が強く、NiAsは電気を通し、強磁性である。13族元素とはMAs型のヒ化物をつくり、閃(せん)亜鉛鉱型構造をもつ。その電気的特性が注目され、とくにヒ化ガリウムGaAs、ヒ化インジウムInAsは半導体としての用途が広い。
[守永健一]