日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルバー」の意味・わかりやすい解説
アルバー
あるばー
Werner Arber
(1929― )
スイスの微生物学者。グレニヘンに生まれる。チューリヒの連邦立理工科大学を卒業後、1953年にジュネーブ大学の生物物理学研究室の助手となり、1958年博士号を取得した。同年アメリカに渡り、南カリフォルニア大学で助手を務め、1960年帰国、ジュネーブ大学で研究を続け、1965年同大学の臨時教授となった。1970年ふたたび渡米してカリフォルニア大学で分子生物学の研究をしたのち、1971年スイスに戻り、バーゼル大学の教授についた。
1960年ころからλ(ラムダ)ファージを用いて宿主である大腸菌のデオキシリボ核酸(DNA)の制限(DNA分子の分解)および修飾(DNA分子の変化)に関する研究を行い、1968年に大腸菌から制限酵素を分離することに成功。さらに、制限酵素はDNA鎖の固有な塩基配列を読み取って特定の部位で切断する作用をもつことを明らかにした。のちにH・O・スミスは制限酵素によるDNAの切断部位を測定、またネイサンズが制限酵素を用いて遺伝子構造を解明する方法を示した。このように、アルバーによる制限酵素の機能の解明は、遺伝子工学発展の端緒となった。その業績により1978年、スミス、ネイサンズとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部]