遺伝現象を分子のレベルで明らかにする遺伝学の一分野。遺伝子が核酸の一種であるデオキシリボ核酸(DNA)であることが、1944年にアメリカのエーブリーらの形質転換実験によって証明され、さらに1953年にアメリカのJ・D・ワトソンとイギリスのクリックがDNA分子の二重鎖モデルを提出してから、急速に発展した。DNA分子よりの遺伝情報発現機構については、1958年ごろより研究が盛んになり、DNAの遺伝情報はRNA分子に転写され、細胞質でタンパク質分子に翻訳されることが明らかにされた。また、分子遺伝学のもっとも大きな成果ともいえる遺伝暗号の解読は1961年から約5年間に行われた。解読された遺伝暗号を基礎として、形質発現、突然変異機構、調節機構など多くの遺伝現象が分子レベルで解明されている。分子遺伝学分野では最近、遺伝子の人工合成が可能となり、遺伝子DNAと異種の生細胞中で自己増殖するDNA分子を結合してつくった組換えDNAを用いて、遺伝子を増殖させる遺伝子工学実験が発展している。分子遺伝学研究においては研究材料として微生物を用いることが多く、微生物遺伝学と関連し、また分子レベルの研究は生化学的なものが多く遺伝生化学とも重複する研究分野といえる。
[石川辰夫]
『石川辰夫著『分子遺伝学入門』(岩波新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…生体内の化学的反応過程の遺伝的支配機構を解明するこの分野は生化遺伝学とよばれ,遺伝学の重要な分野となった。
[分子遺伝学molecular genetics]
1944年にO.T.エーブリーらはR型の肺炎双球菌にS型の菌から抽出したDNAを与えるとS型に変わり,この変化は子孫に安定して伝わることを証明したが,遺伝子の本体がDNAであるという考えが広く受け入れられるにはそれから10年近い歳月が必要であった。生物の多様性を考慮するとき,遺伝子の本体とみなすには4種のヌクレオチドで構成されるDNAはあまりにも単純に過ぎ,したがって,きわめて多様な存在形態を示すタンパク質のほうが適当と考える強い風潮が当時あったためである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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