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制限酵素 せいげんこうそrestriction enzyme

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

制限酵素
せいげんこうそ
restriction enzyme

二重螺旋 DNA (→デオキシリボ核酸 ) の4~8塩基の特異的な配列を識別し,2本鎖のまま切断する酵素。細菌がウイルス DNAに侵入されたとき,これを切断して身を守る。細菌自身の DNAはその部分だけ修飾 (メチル化) して保護しているので切断されない。 DNAを特定の位置で切断できるこの酵素の発見により,DNA組替え実験や遺伝子解析が可能となった。これまでに発見された制限酵素は約 500種,切断配列は約 100種。 DNA上に各種制限酵素の切断個所を図示したものを制限酵素地図 restriction mapといい,遺伝子の関連性の検討 (たとえば親子鑑定) や遺伝子の解析に用いられる。制限酵素の名称は細菌の属名の最初の1文字,種名の最初の2文字の次に株名やローマ数字をつける。たとえば EcoRIは大腸菌Escherichia coliの R13株の酵素である。切断される部位は回文 (パリンドローム) 構造をもつ。

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百科事典マイペディアの解説

制限酵素【せいげんこうそ】

制限エンドヌクレアーゼとも。特定の塩基配列をもつDNAを特異的に切断する酵素の総称で,多くの細菌がもつ。本来は,細菌がウイルスなどの外来DNAを見つけて切断する,一種の生体防御機構として存在すると考えられるが,遺伝子工学や遺伝子解析のための道具として多用される。
→関連項目遺伝子工学

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世界大百科事典 第2版の解説

せいげんこうそ【制限酵素 restriction enzyme】

二重鎖DNAの特異的塩基配列を認識して切断する一群加水分解酵素の総称。エンドヌクレアーゼ(核酸分解酵素)の一種である。種々の細菌などから200種以上の制限酵素が現在までに分離され,その性質が調べられた。制限酵素は,切断の様式および活性発現に必要な因子により,I,II,IIIの三つの型に分類されている。I型酵素は活性発現にATPS‐アデノシルメチオニンとマグネシウムイオンMg2+を必要とし,認識配列から隔たった部位を切断し,切断される位置は一定していない。

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大辞林 第三版の解説

せいげんこうそ【制限酵素】

核酸分解酵素の一。 DNA の特定の塩基配列を識別してこれを切断する酵素で、細胞に侵入してくる外来の DNA を切断排除する細菌の自己防御機構。生物界に広く分布しているが、種特異性が強く、種々の細菌類からそれぞれの酵素が純化されている。 DNA 塩基配列の決定や遺伝子工学に重要な役割を果たす。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

制限酵素
せいげんこうそ
restriction enzyme

二重螺旋(らせん)DNA鎖中の特定の塩基配列を認識して、鎖の内部を切断するエンドヌクレアーゼ。細菌が生産し、種によって特異性が異なる。遺伝子の構造研究や遺伝子工学のために不可欠な道具として広範に利用されている。
 細菌にバクテリオファージが感染し、ファージDNAが侵入すると、細菌はこのファージDNAを切断して自身を守る。これを制限現象とよび、DNAを切断するための酵素を制限酵素とよぶ。制限酵素は侵入DNA鎖中の特定の塩基配列の部位に結合して、その位置あるいはある程度離れた位置で、二重螺旋を形成している2本の鎖を両方とも切断する。制限酵素が認識する配列は6塩基程度(たとえばGAATCC)のことが多いが、その配列は細菌の種類によって異なる。細菌自身のDNAにも同じ配列が含まれているが、その配列中のアデニンあるいはシトシンが細菌自身によってあらかじめメチル化されているので、酵素に認識されず、切断もされない。つまりバクテリオファージから自身を守るために、細菌は制限酵素と、自己DNA中の特定配列をメチル化する酵素をセットとして備えている。
 制限酵素が認識する特定配列がDNA鎖中に存在する確率はかなり低いので、制限酵素をDNAの切断に利用すると、かなり長い断片が得られる。たとえば認識配列が6塩基の長さだとすると、存在確率は4096(4の6乗)分の1になる。したがって長大なDNA鎖を平均して数千塩基の長さの断片に切り分けることができる。また認識される塩基配列が細菌によって異なるので、さまざまな細菌由来の制限酵素を単独あるいは組み合わせて利用すれば、切断位置が異なるさまざまな断片を得ることができる。このことがDNAの研究にもたらした貢献は限りなく大きい。基礎および応用を含めて、今日の生命科学研究を支えているもっとも重要な手段といえば、制限酵素の利用とPCR法といって差し支えない。制限酵素がなかったら、遺伝子工学はいまだ始まっていなかっただろう。制限酵素研究の功績により、W・アルバー、H・O・スミス、D・ネイサンズが1978年にノーベル医学生理学賞を受賞している。
 制限酵素にはいくつかのタイプがあるが、今日、利用されているのはほとんどが型に属する。型酵素は認識配列の内部あるいは端でDNA鎖を切断する。切り方にもいくつかのパターンがあり、2本の鎖を端でそろえて切るものと、ずらして切るものとがある。また認識配列がパリンドローム(回文)になっている場合が多い。たとえば、もっとも代表的な制限酵素である大腸菌由来のEcoRの認識配列は5'‐GAATTC‐3'の6塩基である。相補鎖にはこれに対応して3'‐CTTAAG‐5'が並んでいるが、方向性が逆なので(逆平行)、それを考慮すると実際の配列はやはり5'‐GAATTC‐3'となる。つまり認識配列部分では二重螺旋が2回対称軸をもち、右から読んでも左から読んでも同じという構造になっている。EcoRはそのような部分を認識して結合し、GとAの間を切断する。2本の鎖は対照的に切られるので、断面が不ぞろいになる。突出した部分どうしは相補的に相互作用できるので付着末端という(図A)。
 これが特異性をもつのりしろの役目を果たし、由来が異なる断片であっても、同じEcoRで切られていれば、末端どうしを接着させてから、結合酵素を使ってつなげることができる。こうして組換えDNAをつくるためのDNAの切り張り細工が可能になる。今日ではさまざまな配列特異性をもつ200種類以上の制限酵素が研究用試薬として市販されている。
 一方、2本の鎖を同じ位置で切断して平滑な末端をつくるものもある。たとえばセラチア菌由来のSmaは、図Bのような6塩基を認識して、真ん中で切断する。
型酵素であっても認識配列がパリンドロームでないものもある。
 制限酵素には型のほかに、型、型、型があるが、生命科学の道具としてはまだほとんど利用されていないので、詳細は省略する。型酵素は、分解酵素とその認識配列をメチル化する酵素とが一体化している。型、型などは、型に比べて作用が複雑である。[笠井献一]

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世界大百科事典内の制限酵素の言及

【核酸分解酵素】より

… 核酸分解酵素は,まず基質の種類(DNAかRNAか)によって大きくデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)とリボヌクレアーゼ(RNase)に分けられる。また,核酸の切断される位置の塩基配列に高い特異性のあるもの(制限酵素),反対にほとんどないもの,また核酸分子の末端から順々に切断を行うもの(エキソヌクレアーゼ),中間を切断するもの(エンドヌクレアーゼ),あるいはまた二本鎖の核酸を切断するもの,一本鎖を特異的に切断するものなど,その切断の様式はさまざまである。 リボヌクレアーゼの中でよく研究されているものの一つにリボヌクレアーゼT1がある。…

【組換えDNA】より

…どちらの方法も,特定遺伝子の活性を測定できるよう巧みにくふうされている。DNA断片をプラスミドやウイルスに組み込むためには,制限酵素によるプラスミドDNAの切断と,リガーゼによる遺伝子DNA断片とプラスミドDNAの結合反応を行わせ,その結果組換えDNAが形成する。ある生物種の全DNAを断片化し,プラスミドにそれぞれ組み込ませたものを,遺伝子ライブラリー(図書館)という。…

※「制限酵素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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