アンダーソン局在(読み)アンダーソンきょくざい(その他表記)Anderson localization

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンダーソン局在」の意味・わかりやすい解説

アンダーソン局在
アンダーソンきょくざい
Anderson localization

結晶の乱れにより,電子が空間的に局在して結晶全体を動けなくなる現象。1958年にアメリカ合衆国の物理学者フィリップ・W.アンダーソン可能性を指摘した。金属など結晶の電気伝導は,不純物格子欠陥濃度などの乱れに強く影響を受け,乱れが小さい場合に電気伝導率は乱れの大きさにほぼ反比例する。アンダーソンは,結晶の乱れが大きくなるにつれて伝導率がしだいにゼロに近づくのではなく,乱れがある大きさになると伝導率がゼロになる,つまり金属から絶縁体転移すると考えた。この転移の原因となるのがアンダーソン局在である。1970年代末,理論研究のめざましい発展があり,実験との定量的な比較が可能となった。その結果,半導体表面の準2次元系や高濃度不純物半導体で観測されながら,長年解明されずにいた負の磁気抵抗効果の現象が,アンダーソン局在に基づいて解明され,固体内の電子のふるまいについて多くの新たな知見が得られた。

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法則の辞典 「アンダーソン局在」の解説

アンダーソン局在【Anderson's localization】

電子の波動関数が,無秩序性に伴って,空間的に局在化する現象.アンダーソン(P. W. Anderson)がその可能性を1958年に指摘したのだが,以後いろいろな実験的検証が行われ,現在では無秩序系における電子物性の根本とも考えられている.

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世界大百科事典(旧版)内のアンダーソン局在の言及

【アンダーソン転移】より

…相互作用が強くて上記の比が小さいとき,電子の波動関数は十分大きく広がっており,電子は半導体中を不純物伝いにかなり自由に運動でき,電気伝導率も高くなる。他方この比がある値より大きくなると,波動関数は小さく局在化し(アンダーソン局在),熱エネルギーの助けをかりぬ限り電子は移動できなくなり,伝導率は,とくに低温で非常に小さい。このことはアモルファス物質など一般の乱れた体系内での電子の運動に関しても,乱れの激しさに対する電子の移動をひき起こそうとする相互作用の強さの大小関係に依存して,同じように成り立つと考えられており,この種の物質での諸現象を解釈するうえでの一つの指導原理となっている。…

【非晶質固体】より

…このような状態の存在は,非晶質固体では構造の多様性があることによる(結晶では,構造は一義的に決まっている)。 電子の状態について,結晶の場合との大きな違いは,結晶の場合は構造の一様性から電子は容易に動きまわれるのに対し,非晶質固体では,構造の非一様性のため,電子は自由に動きまわることができず,局在(アンダーソン局在)してしまうことである。 応用の面では,太陽電池としてのよい性質が,アモルファスシリコン‐水素について得られており,結晶シリコンより製作費がずっと安価なことから実用的な面での将来が期待されている。…

※「アンダーソン局在」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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