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格子欠陥 こうしけっかんlattice defect

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

格子欠陥
こうしけっかん
lattice defect

結晶は原子の規則配列による立体的結晶格子で構成されている。その規則性がときに乱れた部分が格子欠陥で,金属結晶に多くみられ,点欠陥,線欠陥,画欠陥に大別される。点欠陥は局部的なもので,格子間原子および原子空孔である。線欠陥には転位,面欠陥には積層欠陥結晶粒界,双晶面などがある。これらは金属の結晶塑性,結晶内拡散,時効などの現象と非常に密接な関係があり,金属転位論による解明が進んでいる。図は転位のうち最も単純な刃状転位で,1枚の原子面 (→結晶の原子面 ) の凸印以下が欠落しているので,転位は紙面に対し直角に走る線状欠陥となるわけである。

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百科事典マイペディアの解説

格子欠陥【こうしけっかん】

結晶格子のところどころに存在する配列の乱れ。点状の欠陥としては,原子があるべき格子点が空位になっている,余分の原子が格子の間に押し込まれている,格子点に異種の原子が座を占めるという三つの場合がある。格子欠陥の程度は物質の種類によって異なり,遷移金属(遷移元素)の酸化物や硫化物の結晶に多い。格子欠陥の存在は,結晶内における物質拡散,ハロゲン化アルカリ(ハロゲン元素)の着色現象,半導体の電気伝導,吸着性や触媒としての化学的活性などの原因となる。点状欠陥が合わさって線状または面状にのびた欠陥は転位と呼ばれ,特に金属の機械的性質に強く影響する。
→関連項目金属組織学金属物理学固体物理学ホイスカー

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世界大百科事典 第2版の解説

こうしけっかん【格子欠陥 lattice defect】

理想的な結晶においては,原子は規則正しい格子をつくって並んでおり,このような結晶は完全結晶と呼ばれる。しかし実際に得られる結晶では,この規則性は少し乱れており,この乱れを格子欠陥と呼ぶ。格子欠陥には点状,線状,面状のものがある。点状の欠陥としては,本来の原子の種類と異なる不純物原子の存在,正規の格子点から原子が抜けてしまっている空格子点,正規の格子点でない位置に原子が入り込んだ格子間原子があり,線状の欠陥としては塑性変形に関与する転位がある。

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大辞林 第三版の解説

こうしけっかん【格子欠陥】

結晶格子における原子の欠除や不純物原子の混入などによる格子配列の乱れ。この乱れは結晶の物理・化学的性質に大きな影響を与える。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

格子欠陥
こうしけっかん

金属、半導体、イオン結晶などの結晶中における原子配列には広い範囲にわたる規則性がある。たとえば、碁盤の格子点にきちんと碁石を並べたような構造が結晶中の原子配列を表しているものと考えてよい。しかし、実在の結晶中の原子配列は完全無欠ではなく、各種の不完全性・乱れを含んでいる。これを格子欠陥とよぶ。「欠陥」というと、いかにも不良品という響きがある。確かにそうには違いないが、まさにその格子欠陥があるがために、結晶がいろいろ興味ある性質を示し、実用的にも有用となっている側面もある。格子欠陥はその空間的広がりに応じて、点欠陥、線欠陥、面欠陥に分類される。[小岩昌宏]

点欠陥

図Aに各種の点欠陥を模式的に示した。正規の格子点にあるべき原子が抜けている原子空孔(図Aのa。これを空(くう)格子点という場合もある)と格子間原子(図Aのb)が基本的な点欠陥である。原子空孔の数は温度の上昇につれて増加し、融点直下では1万個の格子点に対し1個程度の割合である。結晶中での原子の移動・拡散は、空孔に隣接する原子が空孔の位置に移ることによりおこる。結晶を高エネルギーの中性子、イオン、電子で照射すると、正規の位置にある原子がはじき飛ばされて、原子空孔と格子間原子がつくられる。
 結晶中にある異種の原子(不純物)も点欠陥の一種である。母体結晶の原子とあまり大きさが変わらない原子は置換型原子(図Aのc)、水素・炭素・窒素・酸素など原子半径が小さい原子は侵入型原子(図Aのd)となる。これらの要素的な欠陥が結合した複合欠陥として、複空孔(図Aのe)、不純物原子と原子空孔の複合体(図Aのf)などがある。[小岩昌宏]

線欠陥――転位

結晶に引張り力を加えたとき、特定の面に沿って原子がすべりあって変形がおこる。この変形は、すべり面全面にわたって一気におこるのではなく、図Bに示すように、すべり面の一部がすべり、そのすべった部分がしだいに広がっていって、ついにすべり面全面を覆う、という順序でおこる。図B(b)のすべった部分とまだすべっていない部分の境界では原子の配列が崩れているが、この部分を転位とよんでいる。この転位は、図C(a)に示すように余分に入った1枚の原子面の端の線になっており、この種の転位を刃(は)状転位とよんでいる。刃状転位の特徴は、転位線がすべり方向に垂直なことである。図C(b)はらせん転位とよばれる転位のもう一つの主要な型を示している。この場合はすべり方向が転位線に平行である。この図で、転位の周りを原子面に沿って回ると、1回転ごとに次の原子面に移る。すなわち、原子面がらせん状に結晶の中に広がっているので、らせん転位とよばれる。せっけん水の中に細いガラス管から空気を吹き出して、直径のそろった泡をつくり液面に並べると二次元的な泡の結晶ができるが、この中には図C(a)に示すようにしばしば刃状転位がみられる。転位は結晶の変形、成長に重要な役割を果たす格子欠陥であり、電子顕微鏡観察などによりその挙動が詳しく調べられている。[小岩昌宏]

面欠陥

実際に用いられる金属材料の大部分は、多数の小さな結晶粒からなる多結晶体で、二つの結晶粒が相接する境界(結晶粒界)は原子配列が乱れており、面欠陥の一種である。結晶は、特定の配列をした原子面を一定に規則に従って積み重ねたものとみることもできるが、積み重ねの誤りは積層欠陥とよばれる面欠陥である。また結晶の自由表面にある原子は、周囲の環境が結晶内部にある原子と異なっており、表面も一種の面欠陥である。なお、面欠陥には、不純物原子が集まりやすいなど特異な性質がある。[小岩昌宏]

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