アントニーとクレオパトラ(その他表記)Antony and Cleopatra

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アントニーとクレオパトラ
Antony and Cleopatra

イギリスの劇作家ウィリアム・シェークスピアの悲劇。 1606~07年頃執筆。トーマス・ノース訳のプルタルコス『英雄伝』による。マルクス・ユニウス・ブルーツス一味を倒してオクタウィアヌス (アウグスツス ) やマルクス・アエミリウス・レピドゥスと第2次三頭政治を組織したマルクス・アントニウス (アントニー) は,クレオパトラ (クレオパトラ7世 ) の魅力のとりこになってエジプトにとどまるが,妻の死と内乱の恐れにローマへ戻り,政局を安定させ,オクタウィアヌスとの不和もその姉オクタウィアとの結婚によって糊塗するが,クレオパトラが忘れられず,再びエジプトに戻る。これを口実にオクタウィアヌスはアントニウスをアクチウムの海戦に破り,クレオパトラ自殺の虚報を信じたアントニウスは自刃する。オクタウィアヌスの手に落ちたクレオパトラも身を毒ヘビにかませてあとを追う。驚嘆すべき「ナイルのヘビ」クレオパトラの性格創造とともに,愛の世界と政治の世界,情欲と理性,夢と現実を,エジプトとローマの対立を通して描く,スケールの大きい絢爛たる作品。

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世界大百科事典(旧版)内のアントニーとクレオパトラの言及

【クレオパトラ】より

…しばしば,唐の玄宗の寵妃楊貴妃と並んで,王座を占めた絶世の二大美人とされ,シェークスピアやショーなどの文芸作品で取り上げられて,世界の支配者たちをその色香で手玉にとった女性として定型化された。ことにシェークスピアの《アントニーとクレオパトラ》は,ローマの将軍アントニウスをあらゆる手練手管で翻弄した妖婦のように描いた。次々とエジプトを訪れて彼女と出会ったローマの将軍の3人を恋のとりこにしたことは事実だが,絶世の美人で妖婦,といったイメージは,必ずしも正しくない。…

※「アントニーとクレオパトラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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