古代ローマの政治家。共和政期を代表する名門の出身。カエサルの独裁官(ディクタトル)就任に協力し,その有力部将となってヒスパニアで活動,前46年にはカエサルの同僚としてコンスル(執政官)に就任した。カエサルの外征(前46-前44)中,騎兵長官(マギステル・エクイトゥム)としてローマ市を預った。カエサルが暗殺(前44)されると,大神祇官(ポンティフェクス・マクシムス)就任とひきかえにアントニウスと結託,アントニウスが元老院派に敗退(前43年3月,ムティナの戦)すると一時元老院に協力するそぶりをみせたが,結局,軍を率いてアントニウスに合流して元老院により公敵宣言をうけた(前43年5月)。前43年10月,アントニウス,オクタウィアヌス(のちのアウグストゥス)とボノニアで会合し,3者共同で権力奪取して第2次三頭政治を開始,勢力範囲としてガリア・ナルボネンシス,ヒスパニア両州を掌握,実兄を含む反対派市民の処刑・追放にも同意した。前42年には2度目のコンスルとなり権力の頂点にあるかにみえたが,将軍としての才に乏しい彼は,結局アントニウス,オクタウィアヌスという両実力者の間の緩衝器的存在にとどまり,フィリッピの戦(前42年10月)ののち,両者によって従来の管轄属州を取り上げられたのを境に没落した。いったんはアフリカ州統治を認められた(前40)が,前36年,シチリアに勢力を広げようとしてオクタウィアヌスに阻止され,三頭政治および公的生活からの引退を強制された。
執筆者:栗田 伸子
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古代ローマの政治家。名門貴族(パトリキ)アエミリウス氏族の出身。カエサルとポンペイウスとの間の内乱で前者に従い、前49年プラエトル(法務官)、前48、47年スペイン総督、前46年コンスルとなった。同年カエサルが独裁官(第三次)になると、彼の死まで副官を務めた。前44年3月にカエサルが共和派に暗殺されると、アントニウスとともにカエサル派に有利な状況をつくりだし、カエサルの後任として大神祇(だいじんぎ)官になった。翌年秋、アントニウス、オクタウィアヌスとともに任期5年の「国家再建のための三人委員」に任命されて政権を握り(いわゆる第二次三頭政治)、前42年に共和派が敗れたのち、三人委員は共和派の追放、財産没収を行ったが、以後レピドゥスはしだいに勢力を失う。前37年に三人委員の任期はさらに5年延長されたが、翌年レピドゥスは委員の地位を奪われ、権力闘争から脱落、大神祇官の地位に甘んじた。
[吉村忠典]
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?~前13/前12
古代ローマの政治家。共和政末期の内乱でカエサルを支持し,前46年コンスルとなる。前43年アントニウス,オクタウィアヌスと第2回三頭政治を成立させたが,前36年三頭政治から除かれ政界を退いた。
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…資産相続の正当性をめぐってカエサル派の実力者アントニウスとは不和になったが,暗殺者の共和派の残党を追撃するなかで和解が成立した。前43年,アントニウスを支持するレピドゥスを加えて,〈国家再建三人委員〉を結成し,元老院の承認によって独裁官の全権を得ると,彼自身は北アフリカ,シチリア,サルディニアおよびコルシカを勢力基盤とする。前42年,フィリッピの戦で共和派の残党を一掃した際には,頭目ブルトゥスの首をカエサルの彫像の前にささげたといわれる。…
…帝政成立前夜のローマで,有力将軍が連携して元老院を制肘(せいちゆう)し共和政体を空洞化させてゆく際の特徴的政治形態。前43年アントニウス,オクタウィアヌス(アウグストゥス),レピドゥスの三者が民会決議で〈国家再建のための三人委員〉となり,全権を掌握した事態を第2次三頭政治と呼び,前60年ポンペイウス,カエサル,クラッススが私的盟約により国政を牛耳ったのを,〈三人委員〉との類似から第1次三頭政治と呼ぶ。(1)第1次三頭政治 東方遠征から帰還したポンペイウスは退役兵への土地配分等の課題達成のため,前59年のコンスルのカエサル,その後援者クラッススと密約し,彼の勢力を警戒する元老院門閥の妨害を封じた。…
… カエサルの甥で遺言により養子・相続人となったオクタウィアヌスはカエサルの領袖アントニウスと結んで公式に国家再建三人委員(いわゆる第2次三頭政治)に就き(前43),カエサルを暗殺した共和主義者の軍隊をフィリッピの戦(前42)で破った。レピドゥスはポンペイウスの息子セクストゥスの征討に功があったが,やがて失脚し,オクタウィアヌスとアントニウスの両雄が残った。アントニウスはクレオパトラと結婚し帝国の東半分を私したので,オクタウィアヌスは西半分の軍勢を率い,アクティウムの海戦(前31)でアントニウス=クレオパトラ連合軍を敗走させた。…
※「レピドゥス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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