オーストリア西部,チロルとフォアアールベルク両州境の峠。標高1802m。古くからイン川流域とライン川流域を結ぶ最短路として利用されていたが,1884年,峠直下のザンクト・アントンSankt Anton~ランゲン間に全長1万0240mの鉄道トンネルが通じ,東アルプスの東西鉄道交通に重要な地位を占めるようになった。また,1978年には全長約14kmの自動車用トンネルも完成した。付近はアルペン・スキー発祥の地で,積雪期間が150日以上にも及ぶ。ザンクト・アントンにはオーストリア・スキー界の祖といわれるH.シュナイダーのスキー学校があるほか,各地に多くのスキー施設が整い,冬の観光地としてにぎわっている。
執筆者:武田 むつみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
オーストリア西部、チロール―フォアアールベルク州境にある峠。標高1793メートル。ドナウ川とライン川の分水嶺(ぶんすいれい)にあたり、西のアレマン人と東のバイエルン人の居住域の接点である。そのため同じオーストリアでも東のチロールと西のフォアアールベルクでは、言語、習慣に大きな違いがある。峠を通る国道と、峠の直下を貫く鉄道トンネルおよび道路トンネルは、アルプスの東西交通の動脈である。峠を中心としてザンクト・アントン、ザンクト・クリストフ、チュルス、レヒを含むアールベルク地方は「白銀のリング」とよばれ、スキーの国際的中心地である。
[前島郁雄]
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