日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォアアールベルク」の意味・わかりやすい解説
フォアアールベルク
ふぉああーるべるく
Vorarlberg
オーストリア最西端の州。ライン川を挟んでスイスに接する。州名は、チロール州との境界の「アールベルク峠の手前にある地方」という意味。面積2601平方キロメートル、人口35万1565(2001)。この州は、本来はスイスのアラマン系ゲルマン人の居住地域で、18世紀以降はバイエルン系ゲルマン人のインスブルック(チロール州の州都)の管理下にあり、独立した州となったのは1918年以降であり、オーストリアの州のなかでは特殊な地位を占める。19世紀に農業地域から工業地域への転換が急速に行われ、18世紀の家内工業に始まった刺しゅう工業は現在この州の輸出産業の中心をなしており、ドルンビルン、ルステナウに中小工場が集まる。他の州と異なり、国、教会、貴族などによる大土地所有がなく、小規模な経営による農牧業が行われる。
[前島郁雄]