知恵蔵 「イタリア地震」の解説
イタリア地震(2016)
イタリア半島はユーラシアプレートの下にアフリカプレートが潜り込むプレート境界となっており、半島東西の海底の動きも重なって、今回地震が発生したアペニン山脈周辺には多くの活断層ができている。09年初めにも、今回の震源の南東数十キロメートルにあるラクイラ付近で群発地震が続き、4月6日にはMw6.3の大きな揺れとなって300人余が犠牲になった。イタリアは地震の多発地であることから、1970年代から耐震に関する法整備が進められ、2000年代以降の建造物には耐震基準も定められた。また、ラクイラ地震後には古くからの建物についても耐震化が課題とされた。しかし、歴史的建造物保全の観点から手続きが煩雑であったり、イタリアの経済状況が停滞していたりといったことから、対策の進行にはばらつきがあった。今回の地震では、町ぐるみで耐震対策が進められたノルチャは震源から約10キロメートルにありながら大きな被害からは免れたのに対し、震源から15キロメートルほどのアマトリーチェでは町全体が崩壊し多くの死者を出した。耐震補強がなされていないれんが造りの建物が多く残されていたことが、その明暗を分けたといわれる。このほか、新しい建物や増改築で安価なセメント製の梁(はり)が使われたり、セメントよりも砂を多くしてコストを下げるなど基準を満たさない手抜き工事が行われたりといった、人為的な原因によって多数の建物が倒壊し、被害が拡大した可能性も指摘されている。
(金谷俊秀 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報