精選版 日本国語大辞典 「活断層」の意味・読み・例文・類語
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最近の地質時代すなわち新生代第四紀に繰り返し活動し、今後また活動する可能性がある断層のこと。1920年代にアメリカのカリフォルニア州で防災の観点からとりあげられ、日本でも「活断層」ということばがこのころから文献に現れる。1995年(平成7)に兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が既知の活断層(淡路島北部の野島断層とその地下の北東延長部)の活動によっておこったことから、それ以後とくに活断層は地震予知や災害対策上注目されている。
活断層には、つねにすこしずつ動き続けている「クリープ性」のものと、平常は休止していてまれに急に活動する「間欠性」のものとがある。前者は、大地震はおこさないが、土地が徐々に食い違っていくため、断層の直上の建造物や道路などが被害を受ける。この種の活断層の実例は、カリフォルニア州サンアンドレアス断層系の一部にある。
これに対して間欠的に活動する活断層は、大地震をまれにおこす地震性の活断層である。日本の活断層を含めて世界中のほとんどすべてがこの種の活断層である。それらの活断層に沿って微小地震が発生していることもあるが、まったく地震が観測されない活断層のほうが多い。
[松田時彦]
活断層が活動すると、その断層の所で地層や地形が切断され、互いに食い違うようにずれ動く。そのずれ動いた量は、1回の大地震では数メートルかそれ以下のことが多いが、長い間にはそのようなことが繰り返しおこるので、それが累積して数キロメートルから数百キロメートルのずれに達していることがしばしばある。このようなずれの量の累積する速度(平均変位速度という)の大小によって、活断層の活動度を表している。平均変位速度が1年当りミリメートルの桁(けた)に達している活断層をA級、A級の10分の1の活動度のものをB級、100分の1のものをC級という。
[松田時彦]
間欠性の活断層が活動する頻度や、そのときの地震の規模は、断層によってさまざまであるが、A級の活断層では、一度に数メートルずれ動くような大地震(マグニチュード7~8)は数百~1000年に1回くらいである。B級ではさらにまれで、数千~1万年に1回くらいである。
[松田時彦]
地震の規模は断層の長さと関係がある。長い断層ほど大きな地震をおこす。たとえば日本の内陸では、長さ20キロメートル程度の断層はマグニチュード7程度の、長さ80キロメートルの断層はマグニチュード8程度の地震をおこす可能性がある。
[松田時彦]
活断層は世界の地震帯に沿って多く分布しているが、日本ではとくに中部地方から近畿地方にかけて異常に多い。日本の陸上部でもっとも大規模で活発なA級の活断層は、西南日本の中央構造線である。中部日本の糸魚川(いといがわ)‐静岡構造線、丹那(たんな)断層、阿寺(あてら)断層などもA級の活断層である。日本の陸上部全体では約2000の活断層の所在および性質がわかっている(活断層研究会編、1991)。これらの内陸部の活断層のいくつかは、明治以後にも、直下型大地震の震源になった。そのような例として、1891年(明治24)の濃尾(のうび)地震をおこした根尾谷(ねおだに)断層(岐阜県)、1896年の陸羽(りくう)地震をおこした千屋(せんや)断層(秋田県)など約10例が知られている。2000年(平成12)の鳥取県西部地震では、付近に活断層は知られていなかった。したがって、まだみいだされていない活断層も多数あると思われる。
活断層は日本列島周辺の海底にも分布する。とくに千島海溝―日本海溝北部の海溝沿いや西南日本南岸沿い(南海トラフ)には、A級よりも活発な海底活断層(AA級)があって、数十~150年間隔で大地震がおこっている。たとえば、十勝沖(とかちおき)地震(1952、1968)、宮城県沖地震(1978)、東北地方太平洋沖地震(2011)、東南海地震(1944)、南海地震(1946)など規模も大きい。また、東北日本の日本海側沖合いの海域にも活断層が多く、新潟地震(1964)や日本海中部地震(1983)などがおこっている。
[松田時彦]
『活断層研究会編『新編日本の活断層――分布図と資料』(1991・東京大学出版会)』▽『集英社編・刊『活断層 日本列島・地震アトラス』(1995)』▽『池田安隆・島崎邦彦・山崎晴雄著『活断層とは何か』(1996・東京大学出版会)』▽『佐伯敏光著『活断層』(1997・編集工房ノア)』▽『鈴木康弘著『岩波科学ライブラリー212 原発と活断層』(2013・岩波書店)』▽『金子史朗著『活断層と地震』(中公文庫)』▽『松田時彦著『活断層』(岩波新書)』
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(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…さらにまたそれらのもともとの地形がいつごろ形成されたものか,地形の形成年代が明らかになれば,変位量と形成年代から変位の速さを推定することもできる。第四紀(最近約200万年間)あるいはもっと限定すれば第四紀後期(最近約15万年間)に地形を変位・変形させている断層や褶曲は,活断層,活褶曲とよばれ,現在,および近い将来においても,再び活動することが推定されている。 日本の東北地方や近畿地方などでは山地と盆地の境界部に断層があって相対的な沈降部が盆地となっている。…
…ただし,地殻の限界ひずみは地震によって大きな〈ばらつき〉を示し,地殻ひずみの値からの予測はごく概略のものとならざるをえない。(c)活断層の有無やその活動の歴史を知ることによってその地域での地震発生の可能性やごく概略の切迫度が推測できる場合がある。特に最近,活断層を発掘して,過去に断層が変位した時期を求め,長期にわたる地震活動史を明らかにしようとする研究(トレンチ法)が行われるようになって,長期的予測に役立つことが期待されている。…
…火成岩の貫入などに伴って断層が放射状あるいは同心円状に発達することがあり,それぞれ放射状断層(図3-e),同心円状断層(図3-f)という。(3)活動の状態による分類 断層のうち地質学的に最近の時代(おおむね第四紀後期)に繰り返し活動し,今後も活動する可能性のある断層を活断層といい,地震予知のうえで注目されている。断層が特定の地震に伴って活動したことが明らかな場合,その断層を地震断層という。…
※「活断層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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