改訂新版 世界大百科事典 「イヌノハナヒゲ」の意味・わかりやすい解説
イヌノハナヒゲ
Rhynchospora chinensis Nees et Meyen
湿った草原や池沼のまわりに生える,カヤツリグサ科の細長い多年草。細い茎と葉が密生して株となる。葉は幅2mmくらいの線形。茎は高さ70cmほどになり,7~10月ころ上の方に細い円錐花序を出し,茶色の小穂をまばらにつける。果実は長さ1.7mmの楕円形で,頂にくちばし状の花柱基があり,基部に6本の剛毛があるが,この剛毛の生え方が犬の鼻ひげの生え方に似ているから,〈犬の鼻鬚〉と呼ばれる。本州の愛知県以西,四国,九州,琉球諸島を経て,中国南部,東南アジア,インドネシア,スリランカに分布する。
イヌノハナヒゲ属Rhynchospora(英名breakrush)は全世界に300種近くあるカヤツリグサ科の大きな属で,イガクサR.rubra(Lour.)MakinoやトラノハナヒゲR.brownii R.et S.のようにほとんどの種は熱帯産であるが,少数の種は温帯,寒帯にも分布している。たとえば白い三日月形の小穂をもつミカヅキグサR.alba(L.)Vahlは本州の高山や北海道に見られるが,さらに広くユーラシア大陸や北アメリカの寒帯に分布する。
ノグサSchoenus apogon R.et S.は近海地などの湿った砂地に生える,細い小さな一年草で,イヌノハナヒゲに近縁であるが,花柱に3個の柱頭があるなどの花部の違いで,オーストラリアを中心に分布するノグサ属に入れられる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報