中生代(とくにジュラ・白亜紀)に栄えたウグイスガイ目のイノケラムス科を代表する海生二枚貝の1属。イノセラムスともいう。殻は一般に大きく,左右相称または不相称(左殻のふくらみが強い)で薄く,殻形,装飾は変化に富む。歯は発達せず,狭長な樋状の靱帯(じんたい)面に沿って多数の靱帯窩(か)がほぼ等間隔に並ぶ。殻の大部分は表面に垂直に並んだ多角柱状の方解石からなり,破片でも他の化石から識別可能である。一部の小型種は流木などに付着して擬浮遊性の生活をしたらしい。広義のイノケラムスを多数の属,亜属に分ける学者があり,分類はまだ混乱している。分布が広く形態変化が著しいので,アンモナイトと並び地層の国際的対比や時代判定にきわめて有効。日本でも北海道をはじめ各地の地層(とくに白亜系上部)に多くの特徴的な種が知られ,示準化石として重視される。白亜紀末に絶滅し,新生代に子孫は残らなかったとみられる。
執筆者:速水 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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