産出した地層の対比を行い,さらにその地質年代を決定するのに用いられる化石。標準化石ともいう。示準化石としては,通常化石属ないし化石種を指すことが多い。地域に分かれて分布する地層群の中に示準化石を含む地層を追跡して,地域間の対比をする生層位学の方法は19世紀前半に確立されたが,これはそれらの化石となった古生物の属や種の生存期間の枠で,地層が形成された時期の同時性をおさえるという単純な原理に基づいている。したがって示準化石として望ましい条件としては,(1)層位的分布の幅が狭いこと,言い換えればその古生物の生存期間が短いこと,(2)地理的分布が広いこと,(3)古生物として環境適応性に富んでいて,化石としてはいろいろな種類の堆積岩から産出すること,(4)産出頻度が高いこと,(5)形態的特徴がわかりやすく,他のものとの識別が容易であることなどがあげられる。このような条件をすべて満たすものはきわめて少ないが,それぞれの時代において著しい進化発展を遂げた古生物が示準化石となっている。例えば,古生代においてはカンブリア紀の三葉虫類,オルドビス紀~シルル紀の筆石類,石炭紀~二畳紀のフズリナ類,あるいは古生代でもとりわけ前半期の腕足類,中生代においては全期を通じてのアンモナイト類,新生代に入ってヌンムライトなどの第三紀の大型有孔虫などが古くから重要視されてきた。これらはすべて海生動物であるが,陸生動物の中にも大型哺乳類のように,急速に進化しつつ広域に移動分布したものは示準化石として用いられている。先にあげた海生動物の場合,大部分は底生生活者であるが,筆石類やアンモナイト類の一部のように浮遊性や遊泳性のものもある。前者と比べて後者のような習性の生物の方が局地的な海底環境条件に支配されることが少なく,広域に分布するという特徴がある。また進化速度が速く,属や種としては短命なものが少なくない。近年浮遊性生物の微化石は示準化石として重視される傾向にある。これらは陸上と海底とを問わず海成堆積物の広域対比やその年代決定に用いられ,さらに石油・天然ガス資源などの存在状態を知るのに必要な,地下の地質構造の解明のような応用方面でも重用されている。主要な種類としては,石灰質の殻を持つ浮遊性有孔虫(白亜紀~新生代),石灰質ナンノプランクトン(コッコリス。ジュラ紀~新生代),ケイ酸質の骨格や殻を持つ放散虫(カンブリア紀~新生代),浮遊性ケイ藻(白亜紀~新生代),ケイ質鞭毛藻(白亜紀~新生代),セルロース質の表皮を持つ浮遊性渦鞭毛藻(シルル紀~新生代)などがあげられる。カンブリア紀に出現し,三畳紀末に絶滅した微化石として知られるコノドントは,示準化石として広く用いられているが,これを残した古生物の正体についてはいまだに不明な点が多い。しかし,これも浮遊性ないし遊泳性動物であったと推定されている。
執筆者:高柳 洋吉
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…化石帯はいろいろの基準により定義されるが,化石の組合せや特定化石の層位的産出範囲(古生物の生存期間)に基づくものが多い。このように,それが含まれている地層を認定し,年代を決定するのに用いられる化石を示準化石という。
【古生態と古環境】
化石化した古生物とそれが生息していた環境との関係を扱う古生物学の分野が古生態学である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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