改訂新版 世界大百科事典 の解説
イブラヒム・ミュテフェッリカ
İbrahim Müteferrika
生没年:1674ころ-1745
オスマン朝の官人,外交官。トランシルバニアのクルジュでキリスト教徒の子として生まれ,聖職者としての教育を受けたが,イスラムに改宗しオスマン朝に仕え,主として外交の分野で活躍した。改宗の事情については諸説がある。彼はオスマン朝への活版印刷術の導入者として知られる。オスマン帝国領内では,1493年以来,非ムスリム臣民は各自の言語により活版印刷所を開設していたが,アラビア文字による活版印刷に対しては宗教界の反発も強く印刷所もなかった。彼は開放的な世俗文化が栄えたチューリップ時代の雰囲気を背景に,宗教書を除くという条件で勅許を得て,1727年にヨーロッパの技術を導入して活版印刷所をイスタンブールに開き,辞典,文法書,歴史書,地理書,科学技術書等を刊行し,トルコにおける西欧化の一つの原点を築いた。
執筆者:鈴木 董
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報