イリ川(読み)いりがわ(その他表記)Или/Ili

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イリ川」の意味・わかりやすい解説

イリ川
いりがわ
Или/Ili

中国西北部からカザフスタンにかけて流れる川。天山山脈に源を発して北西に流れ、カザフスタン共和国に入り、イリ盆地を北西流し、バルハシ湖に注ぐ。中国名は伊犂(イリ)河。上流部はテケス川とクンゲス川で、これらを含む全長は約1500キロメートル(イリ川となってからは1001キロメートル)、流域面積は15万4000平方キロメートル。中国の伊寧(いねい)(クルジャ)から上流部では山間部を流れ、下流部では広い谷を形成し、カザフスタンに入って砂漠を流れる。中流にイリの町があったが、水力発電用のダムが建設されて水没し、新たにカプチャガイの町ができた。イリ川の中流域の谷は、シルダリヤ地方とジュンガリア地方を結ぶ交通路となっている。流域最大の町はアルマトイ

[須長博明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「イリ川」の意味・わかりやすい解説

イリ[川]
Ili

天山山脈に発して,中国,カザフスタンを流れる川。中国名は伊犂河。天山山脈の主峰ハン・テングリ(汗騰格里,6995m)北面から出て東流するテケス(特克斯)川が天山山脈東部からのクンゲス(崆吉斯)川をあわせてイリ川となり,さらにカシュ(喀什)川と合流して中国の新疆地方北西部のイリ盆地,そしてカザフスタン共和国を東から北西流してバルハシ湖南部東岸に注ぐ。全長約1400km(テケス川を含む。合流してからは950km),流域面積約15万4000km2(うちカザフスタン領7万km2)。上流渓谷には草原,中流平地にはオアシスがみられるが,下流域は砂漠である。このうち,中国の伊寧を中心とする中流域では,灌漑によって米,綿花などの農業や馬の飼育が盛んである。またこの地域は,古来ジュンガル(準噶爾)盆地と中央アジアのシル・ダリヤ流域を結ぶ重要な交通路であった。漢代には伊列,伊利水,唐代には伊麗河と記されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イリ川」の意味・わかりやすい解説

イリ川
イリがわ
reka Ili

中国では伊犁の漢字をあてる。中国北西部のシンチヤン (新疆) ウイグル (維吾爾) 自治区とカザフスタンを流れる川。テンシャン (天山) 山脈東部のハンテングリ山 (6995m) 北斜面から北東流するテケス川と,5000m級のエレンハベルガ山脈南斜面から西流するキュネス (クンゲス) 川がイリ盆地で合流してイリ川本流となり,西流してカザフスタン領に入る。イリで北西に向きを変えてバルハシ湖西部に流入し,河口に大きな三角州をつくる。本流の長さ 1000km,テケス川水源からは 1439km。流域面積 14万 km2。上流部は山間の深い峡谷を流れるが,クルジャ (伊寧) からは広い谷を流れ,小型船舶が就航する。 12月~3月は結氷。中流,下流では河水が灌漑用水として利用される。河谷はかつて天山北路の一つとして重要な交通路であった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android