改訂新版 世界大百科事典 「イワダレゴケ」の意味・わかりやすい解説
イワダレゴケ
Hylocomium splendens(Hedw.)B.S.G.
ヒヨクゴケ科の大型の美しい種で,日本の亜高山帯の代表的な蘚類。北半球の高緯度地域に広く分布し,日本でも各地の高山に生育するが,とくに亜高山帯に多く,針葉樹林の林床に大きな群落をつくる。茎は斜上し,上半部で一平面上に羽毛のように規則正しく分枝する。翌年に主茎の上部から新芽が伸び出して同様に羽状に分枝する。この生長を年々繰り返すため,植物体は多層の塔や階段を思わせる姿となり,その長さが20cm以上に達する場合も多い。このため,中国では塔蘚といい,英語ではstair-step mossまたはfeather mossという。同属のフトリュウビゴケH.brevirostre(Brid.)B.S.G.は全国の山地の普通種。茎が大きな葉によって密におおわれ,先端がしだいに細くなっているため竜尾を思わせる。
執筆者:北川 尚史
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