インダストリアル・キャリア
industrial carrier
生産企業がその生産活動の補助的手段として,もっぱら自ら使用する原料や燃料を輸送するために,またはその製品の輸送手段として,船舶を所有または裸用船して輸送サービスを自給自足する自己運送形態(プライベート・キャリア)の一つ。したがって,この輸送形態は,運賃の受払いがないので,海運市場活動ではない。生産企業が子会社を設立してもっぱら自己の貨物のみを専属輸送させる場合も,このインダストリアル・キャリアの概念に含まれる。このような自己運送形態は,第2次大戦前にも存在したが,戦後の著しい重化学工業の発展にともない,特に石油輸送に重要な役割を果たしている。国際石油資本(メジャー)をはじめ,多くの石油会社は,大量の石油輸送需要を海運企業に提供する一方で,自らも大量のタンカーを保有または裸用船して自家輸送を行っている。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インダストリアル・キャリア
industrial carrier
自家用輸送 (→運輸業 ) のうち,特に企業・産業が自己の商品や製品をみずから運送する場合,その運送部門や運送形態をいう。依頼主から独立した輸送業者であっても,特定の企業・産業の製品を専門に輸送する特定輸送業者 (コントラクト・キャリア) はこれに含まれる。たとえばユナイテッド・フルーツのバナナ専用船,自動車会社の自動車専用船,競走馬匹輸送専門業者など,特殊な技術を要する運送分野で発達している。日本では 1970年代前半から鉄道会社のスト対策も含めて,製造業が自企業内の運送部門として,あるいは系列の運送企業としてトラック部門を育てることが多かった。しかし,1990年前後にはドライバー不足が顕著となり,自家用トラックに比較して営業トラックが増加している。また 90年の物流2法の改正により,自社貨物と他社の貨物を積合せて運送することが可能となり,製造業の運送部門や物流子会社が運送市場に参入する素地が整った。 (→公共運送人 )
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世界大百科事典(旧版)内のインダストリアルキャリアの言及
【交通】より
…こうした規制によって,コモン・キャリアは公衆のために共同利用が可能な輸送機関となった。やがて産業が発達すると,専門の輸送業者を利用したほうが輸送の効率が高まるところから,インダストリアル・キャリアindustrial carrierと呼ばれる輸送業者が発展した。インダストリアル・キャリアとは,ある企業が原料,製品などをみずからの手で運送する場合の運送人,あるいは特定の企業に専属する輸送業者である。…
【貨物船】より
…あらゆる貨物輸送に適合するよう荷役装置を合理化した多目的貨物船も注目されるようになっている。 石油,鉄鉱石,石炭などの工業原料の輸送は不定期船貨物の重要な柱であるが,これらはむしろインダストリアルキャリアとしてとらえるほうが自然である。荷主を特定しない輸送業者をコモンキャリアと呼び,生産者が自己の生産活動のために生産者自体,あるいは自己の支配下の組織に運航させる場合をインダストリアルキャリアと呼ぶ。…
【交通】より
…こうした規制によって,コモン・キャリアは公衆のために共同利用が可能な輸送機関となった。やがて産業が発達すると,専門の輸送業者を利用したほうが輸送の効率が高まるところから,インダストリアル・キャリアindustrial carrierと呼ばれる輸送業者が発展した。インダストリアル・キャリアとは,ある企業が原料,製品などをみずからの手で運送する場合の運送人,あるいは特定の企業に専属する輸送業者である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」