ウォルフ‐キシュナー還元(読み)うぉるふきしゅなーかんげん(その他表記)Wolff-Kishner reduction

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォルフ‐キシュナー還元
うぉるふきしゅなーかんげん
Wolff-Kishner reduction

有機化合物カルボニル基=Oをメチレン基-CH2-に還元する方法として医薬品などの合成に重要な反応アルデヒドケトンセミカルバゾンまたはヒドラゾンを水酸化アルカリと加熱して直接メチレン基CH2に還元する反応である。この反応に使うセミカルバゾンはアルデヒドまたはケトンをセミカルバジドと反応させると容易に得られ、ヒドラゾンもアルデヒドまたはケトンとヒドラジンとの反応により容易に得られる()。アルデヒドやケトンのカルボニル基C=Oをヒドラゾンにしないでアルカリ性の下で還元すると、アルコールCHOHになることが多い。1911年ロシアのキシュナーNikolai M. Kishner(1867―1935)に、また独立に翌1912年ドイツのウォルフJohaun Ludwig Wolffによりみいだされた。ケトンの還元法は酸性条件下が多いが、この方法は酸に不安定なケトンにも用いられ収量も高く合成に有用である。

[湯川泰秀・廣田 穰]


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改訂新版 世界大百科事典 の解説

ウォルフ=キシュナー還元 (ウォルフキシュナーかんげん)
Wolff-Kishner reduction

ケトンまたはアルデヒドのカルボニル基をメチレン基CH2に変換する還元反応。1911年キシュナーN.Kishner,12年ウォルフL.Wolffと,ほぼ同時に2人の化学者によって見いだされた。カルボニル化合物をまずヒドラゾンに変換し(式(1)),これをアルカリの存在下で加熱すると還元生成物が得られる(式(2))。一般に,式(1)の反応により,まずヒドラゾンを単離したのちに,式(2)の反応を行うが,最近では,ヒドラゾンを単離せずにそのままアルカリで還元する方法が使われる。この簡便法は発明者にちなんでホアン=ミンロンHuang-Minlon法とも呼ばれ,汎用されている。例を式(3)に示す。
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化学辞典 第2版 の解説

ウォルフ-キシュナー還元
ウォルフキシュナーカンゲン
Wolff-Kishner reduction

アルデヒドあるいはケトンのヒドラゾンをジまたはトリエチレングリコール溶媒として,強塩基の存在で150~200 ℃ に加熱してカルボニル基をメチレン基に還元する反応.二重結合は変化せず収量もよい.水酸化カリウムのような塩基を用いるファンミンロン(Huang Minlon)の改良法がよく用いられる.

不安定ジイミドを中間体とする反応機構が推定されている.クレメンセン還元より反応条件が緩和である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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