日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォーターフロント開発」の意味・わかりやすい解説
ウォーターフロント開発
うぉーたーふろんとかいはつ
ウォーターフロントとは「海陸一体となった沿岸域」のことである。1977年(昭和52)に策定された第三次全国総合開発計画(三全総)において、「保全と開発のバランスのとれた沿岸域の総合利用」が提唱されて以来、治水・利水機能の陰に隠れて軽視されがちであった水辺のもつ環境機能や景観の保全、水との触れ合いによる情操効果等が、住民の意識変化とともに再確認され始め、都市化による自然の喪失という事実もあって、水辺再生の願望が強まってきている。また老朽化し、遊休化している在来埠頭(ふとう)地区や臨海部の工場移転跡地などのウォーターフロントは、都市環境の悪化が目だち始めており、都市の再生を図るための再開発が必要となっている。横浜市のみなとみらい21(MM21)や東京都の大川端再開発は、アメリカのサン・アントニオの河畔再開発と並んで、ウォーターフロントの蘇生(そせい)を、都市再生の契機にしようとする動きであるということができる。
都市の再開発に、親水空間の整備という発想を取り入れるには、ウォーターフロント特有の地理的特性を生かした基本理念を確立し、その実現のためにウォーターフロントの公有化、再開発地域の先行取得制度や公的融資制度の創設など、環境整備のための制度的改革が必要となろう。日本の国土は四つの主島と約4000の島々からなる狭長な列島であり、海岸線は湾や入り江、島嶼(とうしょ)などが入り組む。その総延長は約3万3900キロメートルでアメリカの5万6000キロメートルに次ぐ長さをもち、イギリスの8850キロメートルやフランスの7820キロメートルのおよそ4倍であり、その保全と開発が期待される。
[伊藤善市]