改訂新版 世界大百科事典 「エシュヌンナ法典」の意味・わかりやすい解説
エシュヌンナ法典 (エシュヌンナほうてん)
現在知られているアッカド語で書かれた法典のうち最古のもの。その内容は現在のテル・ハルマルTell Harmalで発見された2枚の粘土板文書によって知られる。まえがきの部分が破損しているため,エシュヌンナのどの王の治世にできたものか確かではないが,ハンムラピ法典より数十年古いものと考えられている。現存の法典は,大麦,油,羊毛など主要商品の価格(1,2条),牛引き付きの牛車や船頭付きの船の賃貸料,各種労働者の日当(3,4,7~11条),窃盗(12,13条),奴隷および子供の商取引上の身分(14~16条),婚姻・家族(17,18,25~35,59条),ローン(貸付け)(19~21条),不法人身拘束(22~24条),物品の保管責任(36,37条),特殊な商取引(38~41条),傷害(42~48条),奴隷(49~52条),牛または飼犬による人身傷害(53~58条)などを規定するが(60条は破損),形式上の整合性と内容の包括性においてハンムラピ法典に劣る。〈もし……ならば〉で始まる決疑法のほかに,〈……は……すべし/すべからず〉の形式をもった断言法(12,13,15,16条など)なども見られること,また主要商品の価格,諸種賃貸料および日当の規定などにかなりのスペースがさかれている点などが特徴といえる。
→楔形文字法
執筆者:中田 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報