エナメル上皮腫(読み)えなめるじょうひしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エナメル上皮腫」の意味・わかりやすい解説

エナメル上皮腫
えなめるじょうひしゅ

顎骨(がくこつ)内に生じる歯系腫瘍(しゅよう)の一つで、エナメル質を形成する組織によく似た構造をもっているため、このようによばれる。発生部位はおもに下顎骨、とくに智歯(ちし)(親知らず)部に多く、上顎骨には少ない。腫瘍は顎骨内部に発生し、周囲の骨を圧迫しながら発育し、大きくなると顎骨の膨隆がみられるようになり、さらに大きくなると顎骨を突き破り、粘膜を通して腫瘤(しゅりゅう)に触れることができる。この疾患自覚症状がほとんどないので、大きくなるまで発見されないことが多い。通常、良性腫瘍として扱われているが、組織に迷入しながら発育するため、腫瘍摘出後、再発することがある。再発を繰り返すと、ときには悪性化し転移を生じる。治療としては、腫瘍摘出術が施されるが、再発のおそれがある場合には、腫瘍を含めた顎骨切除を行うことがある。

[土谷尚之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エナメル上皮腫」の意味・わかりやすい解説

エナメル上皮腫
エナメルじょうひしゅ
ameloblastoma

顎骨,ことに下顎骨の大臼歯部に生じる良性腫瘍で,思春期前後に発生することが多い。顕微鏡で見ると,その構造が歯の発生過程におけるエナメル器に似ているので,歯原性腫瘍として分類される。増大するにつれて顎骨は膨隆し,頬部や口腔内がふくれてくる。腫瘍内部に退行変性による多数の嚢胞を生じる場合が多く,X線による診断の決め手とされる。腫瘍の発育速度は緩慢であるが,骨髄腔内に侵入増殖しているので,摘出後再発することもまれではなく,顎骨部分切除術を行う場合もある。きわめてまれであるが,悪性腫瘍に変化することがある。

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