日本大百科全書(ニッポニカ) 「エネルギーシステム改革」の意味・わかりやすい解説
エネルギーシステム改革
えねるぎーしすてむかいかく
とくに日本における電力・ガス市場において、市場機能の有効活用を最大限図る方向で制度改革を進め、競争を促進して市場効率の改善を図る改革のこと。電力・ガスシステム改革ともいう。
かつて日本のエネルギー産業は政府の規制のもとに置かれる規制産業であったが、欧米で開始されたエネルギー市場自由化の取組みを受けて、まず石油産業の自由化が始まり、1990年代からは電力・ガス市場の自由化も本格的に進められるようになった。
段階的に進められてきた日本の電力・ガス市場改革であったが、2011年(平成23)の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、エネルギー政策の総点検が行われることになり、電力・ガス市場について抜本的なシステム改革を行っていくことになった。
システム改革の大きな流れとしては、小売市場の全面自由化(電力は2016年から、ガスは2017年から)、ネットワーク部門の法的分離(電力は2020年。ガスは大手3社のみ、2022年)の制度改革があり、競争促進・市場効率改善が図られてきた。
その結果、電力・ガス市場ともに新規参入者による既存事業者からの市場シェア獲得・拡大、競争的な卸電力市場の活性化など、日本の電力・ガス市場は大きく変化してきた。
他方で、競争導入が進むなか、電力安定供給のために必要な設備投資などが抑制されたり、経済性重視の観点で設備閉鎖・停止が進んだりして、電力安定供給に新たな課題が生まれている。さらに、この期間中、同時進行で進められてきた温室効果ガス排出削減を強化する政策について、競争促進のなかでどう整合性を図るか、等の課題も浮上した。また、とくに電力市場では、急速に普及が進む再生可能エネルギーの電力市場への統合が大きな課題になってきた。これらの新たな課題に対応して、全体としてのシステム改革が進められるなか、詳細な制度設計による対応が必要になっている。
[小山 堅 2022年1月21日]