化学辞典 第2版 「エマルション紡糸」の解説
エマルション紡糸
エマルションボウシ
emulsion spinning
適当な溶剤がないとか,融解すると熱分解しやすい材料を紡糸する一方法.紡糸しにくい材料を紡糸しやすい材料(マトリックス物質)の溶液中にエマルション(乳濁液)として乳化分散させ,湿式または乾式紡糸に準拠して紡糸し,エマルション粒子を熱,溶剤などで連続化して繊維を形成させる.その際,マトリックス物質を除去する場合とそれを含めたままの場合とがある.前者はポリ(テトラクロロエチレン)の繊維をつくる場合であり,原料のポリ(テトラクロロエチレン)の微細粉を水に懸濁させ,ビスコース,アルギン酸ナトリウムなどをマトリックスとして紡糸液とし,マトリックス物質の凝固する凝固浴中に押出し,糸をつくり,これを320~400 ℃ に加熱して,マトリックス物質を除去するとともに,ポリ(テトラクロロエチレン)粒子を融着させ,熱延伸して繊維とする.後者にはポリクラール繊維がある.これは塩化ビニルをポリ(ビニルアルコール)水溶液中で乳化重合し,ポリ(塩化ビニル)エマルションをつくる.このとき,一部はポリ(ビニルアルコール)とグラフト共重合物を形成する.これをポリ(ビニルアルコール)の湿式紡糸に準じて糸とし,マトリックス物質であるポリ(ビニルアルコール)は除かず製品とする.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報