日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビスコース」の意味・わかりやすい解説
ビスコース
びすこーす
viscose
セルロースキサントゲン酸ナトリウムを水酸化ナトリウムの水溶液に溶かした橙赤(とうせき)色の粘い液体。木材を精製した「溶解パルプ」に約18%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて室温で数時間置き、圧搾してアルカリセルロースを得る。得られたアルカリセルロースを粉砕し、二硫化炭素を加えて加熱するとゼリー状のセルロースキサントゲン酸ナトリウムが得られる。これを水酸化ナトリウムの水溶液に溶かし、濾過(ろか)してビスコースを得る。セルロース約8%、水酸化ナトリウム約6%を含む。
ビスコースは黄色の液体として得られるが、しだいに粘度の高い赤褐色の溶液に変化する。ビスコースをノズルから希硫酸浴中に押し出すと、セルロースキサントゲン酸ナトリウムが分解して元のセルロースに戻って、ビスコースレーヨンが得られる。ビスコースからセロファンやスポンジもつくられる。以前、人造繊維として使われていたビスコースレーヨンのことを「人造絹糸」とよんでいたが絹糸とは成分が異なる。
[加治有恒・廣田 穰 2015年7月21日]