エルクラーノ(その他表記)Alexandre Herculano

改訂新版 世界大百科事典 「エルクラーノ」の意味・わかりやすい解説

エルクラーノ
Alexandre Herculano
生没年:1810-77

ポルトガル歴史家小説家詩人。大学教育を受ける機会に恵まれなかったが,当時最高の歴史学者となり,4巻に及ぶ大著ポルトガル史》(1846-53)は,まだその価値を失っていない。また《ポルトガル史料集》(1873)は史料的価値ばかりでなく,民俗学的・言語学的研究資料としての価値もきわめて高い。小説家としての彼はポルトガルの歴史小説創始者と目されており,その作品--たとえば《伝説集》(1851)--の背後には,歴史学者としての確かな目が感じられる。ロマン派詩人としての活動は《こわされた十字架》(1849)で終わる。代表的な詩は《信者の琴》(1838)に収められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルクラーノ」の意味・わかりやすい解説

エルクラーノ
Herculano de Carvalho Araújo, Alexandre

[生]1810.3.28. リスボン
[没]1877.9.13. サンタレン
ポルトガルの小説家,詩人,歴史家。同国におけるロマン主義文学の創始者の一人。 1828年,一時フランスに亡命したが,ドン・ペドロ4世の兵士として帰国。晩年はサンタレンの別荘に隠遁生活をおくり,思索に富んだ作家,歴史家としてすぐれた業績を残した。古文書縦横に駆使して『ポルトガル史』 História de Portugal (1846~53) や,『ポルトガルにおける宗教裁判の起源と設立の歴史』 Da origem e estabelecimento da Inquisição em Portugal (54~59) を執筆。歴史小説『司祭エウリーコ』 Eurico,o Presbítero (44) ,『システルの僧』 Monge de Cister (48) ,詩『信者の竪琴』A Harpa do Crente (38) などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルクラーノ」の意味・わかりやすい解説

エルクラーノ
えるくらーの
Alexandre Herculano
(1810―1877)

ポルトガルの小説家、歴史家。ガレットらとともにロマン主義を創始し、おもに中世に取材した歴史小説を開拓する。荘重、的確な文体で『道化者』(1843)、『司祭エウリーコ』(1844)、『物語集』(1851)などを著し、歴史家としても多く名著がある。

[濱口乃二雄]

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