オグズ・ナーメ(読み)おぐずなーめ(英語表記)Ouz-nāme

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オグズ・ナーメ」の意味・わかりやすい解説

オグズ・ナーメ
おぐずなーめ
Ouz-nāme

トルコの民族叙事詩。物語はトルコ系のオグズ人の伝説的始祖オグズ・カガンの誕生にまつわる逸話に始まり、彼の近隣諸族との抗争、彼の後継者であるオグズの諸カガンたちの中央アジア西アジア諸地方への遠征などをつづったものである。オグズ人のイスラム化以後、この物語もその影響を受けた。

 この物語はオグズ人の移動に伴って、中央アジア、西アジアのチュルク人の間に広まったが、のちウイグル語によるテキストが1936年にドイツ人バング・カウプBang Kaup(1869―1934)とトルコ人ラフメティ・アラトRahmeti Arat(1900―64)の2人の言語学者によって現代トルコ語訳された。アナトリアでは、この物語の一部にギリシア神話との類似性が認められるものがある。

[永田雄三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オグズ・ナーメ」の意味・わかりやすい解説

オグズ・ナーメ
Oghuznāme

トルコ諸族の一つオグズ族の伝説的英雄であるオグズ・カガン Oghuz-Kaghanの生涯と征服活動を記した物語。この伝説にはさまざまの版本があるが,最も古い形をとどめているのは,15世紀にキルギス地方で書かれたとみられるウイグル文字によるトルコ語写本である (パリ国立図書館所蔵) 。この物語は,オグズ族の移動とともに中央アジア,西アジアのトルコ系諸族の間に広まり,オスマン・トルコもその始祖伝承のなかへこれを組入れるにいたった。

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