世界の安定的平和や国際紛争の平和的解決の実現に向けた研究を行う民間機関。武力に頼らない紛争解決を目ざすノルウェーの国際政治学者、平和学者のヨハン・ガルトゥングによって1959年に創設された、非政府系・非営利の独立研究機関である。略称、PRIO(プリオ)。本部をノルウェーのオスロに置き、初代所長をガルトゥングが務めた。ガルトゥングは平和を、戦争のない状態である「消極的平和negative peace」に加えて、貧困、抑圧、差別、暴力などのない「積極的平和positive peace」であるべきだとの概念を提唱した平和学の第一人者である。
オスロ国際平和研究所は世界初の平和学の研究センターであり、国際的な平和研究機関の先駆けとなった。国際政治状況に即した基礎的研究のほか、対話や和解を通じた紛争解決や平和推進の啓蒙(けいもう)に努めている。また国際平和に関する情報を世界に発信し、平和学の進展に貢献している。所内の公用語は英語。スタッフは約75人で、半数以上が研究者である。研究所の基礎基金は約600万ノルウェークローネ(約9900万円)。予算規模は2015年時点で1億2000万ノルウェークローネ(約19億8000万円)であり、寄付金のほか、ノルウェー政府や国際連合関連機関などから依頼される平和関連研究などを受託することによる報酬でまかなわれている。
オスロ国際平和研究所は毎年、ノーベル平和賞の発表に先だち、受賞予想を発表しているが、同じオスロに本部を置くノーベル財団とは無関係である。
[矢野 武 2016年5月19日]
… ヨーロッパの平和研究としては,まず北欧の伝統に触れなくてはならない。《世界の軍備と軍縮》年報の刊行で著名な〈ストックホルム国際平和研究所〉の地味な活動は世界的に著名であるが,平和を知的探究の対象としたという意味で,ノルウェーの社会学者ガルトゥングJohan Galtungによって創設され,その指導下で展開された〈オスロ国際平和研究所〉の研究活動がなによりも重要である。とりわけ,ガルトゥングの学問的営為は平和研究の新地平を切り開き,平和研究の発展に大きな影響力を与えた。…
※「オスロ国際平和研究所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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