日本大百科全書(ニッポニカ) 「オタマボヤ」の意味・わかりやすい解説
オタマボヤ
おたまぼや / お玉海鞘
原索動物門尾索綱尾虫目オタマボヤ科に属する海産動物の総称。終生、浮遊生活を営み、温水域を中心に全世界に普通に生息する。虫体は卵形で長さ数ミリメートル程度の躯幹(くかん)と、その腹面から生じる扁平(へんぺい)で長い尾部とからなる。躯幹は消化、生殖、中枢神経系などを含み、尾部は2列の筋肉細胞が神経と尾索とを挟み込む。口は躯幹前端に開く。広い咽頭(いんとう)は内柱を備え食道に続く一方、繊毛の生えた1対の内鰓孔(ないさいこう)を末端腹側部にもつ。各内鰓孔は短い鰓道を経て、躯幹腹面に開く外鰓孔に連なる。囲鰓腔(いさいこう)や排出腔はない。虫体は、躯幹表皮の造巣組織が分泌する被嚢(ひのう)によって構築される厚い寒天質の「家(ハウス)」とよばれる部分に包み込まれるが、採集時にはその刺激で離脱する。「家」は濾過(ろか)装置を備え、尾の動きによって流入した微細プランクトンをとらえる。摂餌(せつじ)に支障が生じた「家」は脱ぎ捨てられ、すでに形成されていた原基が速やかに展開して更新される。内湾に普通にみられるワカレオタマボヤOikopleura dioica以外はすべて雌雄同体。無性生殖は知られていない。発光する種や、まれに赤潮生物となる種もある。ヨーロッパ産ヒラメなどの稚魚の主要な餌(えさ)となる例がある。日本近海からはこれまでに、全既知種の半数にあたる16種がみつかっている。
[西川輝昭]