オベーチキン(その他表記)Valentin Vladimirovich Ovechkin

改訂新版 世界大百科事典 「オベーチキン」の意味・わかりやすい解説

オベーチキン
Valentin Vladimirovich Ovechkin
生没年:1904-68

ソ連邦作家。南ロシアのタガンログ生れ。コムソモール細胞書記をふりだしに,農業コミューン(コムーナ)や党関係の仕事に従事,この体験をもとに現実を表現しようとするオーチェルク記録文学)の方法を開拓。初期の《コルホーズ物語》(1935),《プラスコービヤ・マクシーモブナ》(1939)をはじめ,第2次大戦後農村とコルホーズ生活を描いた《前線からの挨拶》(1945),オーチェルク文学傑作といわれる連作《地区の日常》(1952-56)等の作品がある。コルホーズを舞台に古い沈滞した生活と新しいものの葛藤を鋭くえぐりだした《地区の日常》は,現実を美化しようとする文学とは異質のもので,スターリン体制批判の先駆けとなった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オベーチキン」の意味・わかりやすい解説

オベーチキン
おべーちきん
Валентин Владимирович Овечкин/Valentin Vladimirovich Ovechkin
(1904―1968)

ロシアの作家。ロストフ州タガンログ生まれ。同地の工業学校に学ぶ。1927年、処女短編『サベーリン』を地方新聞に発表、29年に入党。党活動のかたわら地方紙の通信員として文筆活動を行った。39年から雑誌『赤い処女地』に一連の中・短編を発表。第二次世界大戦中は従軍記者として活躍した。戦後の52年から56年にかけて『地区の日常』を発表。作者はこのオーチェルク(記録文学)のなかでコルホーズの生活にメスを入れ、それまでのソ連時代のロシア文学にみられなかった新鮮な感動を読者に与えた。党員でありながら、あえて党批判を行った誠実な作家であった。

木村 浩]

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