オリンピック憲章(読み)オリンピックケンショウ

デジタル大辞泉 「オリンピック憲章」の意味・読み・例文・類語

オリンピック‐けんしょう〔‐ケンシヤウ〕【オリンピック憲章】

国際オリンピック委員会(IOC)が採択したオリンピックに関する基本原則や規則を成文化したもの。オリンピズムの根本原則、オリンピックムーブメントの組織・活動、オリンピック競技大会の開催条件などを定めている。五輪憲章。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリンピック憲章」の意味・わかりやすい解説

オリンピック憲章(オリンピズムの根本原則・第1章)
おりんぴっくけんしょう

本欄は、2019年6月26日から有効のオリンピック憲章の規則(全61項目)のうち、オリンピズムの根本原則と第1章を記載したものである。

【オリンピズムの根本原則】
1. オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学である。オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するものである。その生き方は努力する喜び、良い模範であることの教育的価値、社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。

2. オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。

3. オリンピック・ムーブメントは、オリンピズムの価値に鼓舞された個人と団体による、協調の取れた組織的、普遍的、恒久的活動である。その活動を推し進めるのは最高機関のIOCである。活動は5大陸にまたがり、偉大なスポーツの祭典、オリンピック競技大会に世界中の選手を集めるとき、頂点に達する。そのシンボルは5つの結び合う輪である。

4. スポーツをすることは人権の1つである。すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。オリンピック精神においては友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。

5. オリンピック・ムーブメントにおけるスポーツ団体は、スポーツが社会の枠組みの中で営まれることを理解し、政治的に中立でなければならない。スポーツ団体は自律の権利と義務を持つ。自律には競技規則を自由に定め管理すること、自身の組織の構成とガバナンスについて決定すること、外部からのいかなる影響も受けずに選挙を実施する権利、および良好なガバナンスの原則を確実に適用する責任が含まれる。

6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。

7. オリンピック・ムーブメントの一員となるには、オリンピック憲章の遵守およびIOCによる承認が必要である。


【第1章 オリンピック・ムーブメント】
1 オリンピック・ムーブメントの構成と全般的な組織
1. オリンピック・ムーブメントは、国際オリンピック委員会の最高権限と指導のもと、オリンピック憲章に導かれることに同意する組織、選手、その他の個人を包含する。オリンピック・ムーブメントの目的は、オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ若者を教育することにより、平和でより良い世界の構築に貢献することである。

2. オリンピック・ムーブメントの主要3構成要素は、国際オリンピック委員会(IOC)、国際競技連盟(IF)、国内オリンピック委員会(NOC)である。

3. 上記の主要3構成要素に加え、オリンピック・ムーブメントにはオリンピック競技大会の組織委員会(OCOG)IFおよびNOCに所属する国内の協会、クラブ、個人も含まれる。特に選手の利益はオリンピック・ムーブメントの活動において、重要な構成要素である。さらにオリンピック・ムーブメントにはジャッジレフェリー、コーチ、その他の競技役員、技術要員が含まれる。IOCの承認するその他の組織および機関もオリンピック・ムーブメントの構成要素である。

4. オリンピック・ムーブメントに所属する個人および組織は、どのような活動資格であれ、オリンピック憲章の規則に拘束され、IOC の決定に従わなければならない。

2 IOCの使命と役割
 IOCの使命は世界中でオリンピズムを促進し、オリンピック・ムーブメントを主導することである。IOCの役割は以下の通りである。

1. スポーツにおける倫理と良好なガバナンスの促進、およびスポーツを通じた青少年教育を奨励し支援する。さらに、スポーツにおいてフェアプレー精神が広く行き渡り、暴力が禁じられるよう、全力を尽くす。

2. スポーツと競技大会の組織運営、発展および連携を促し支援する。

3. オリンピック競技大会を定期的に確実に開催する。

4. スポーツを人類に役立てる努力において、権限を有する公的または私的な組織および行政機関と協力し、その努力により平和を推進する。

5. オリンピック・ムーブメントの結束を強め、その主体性を守り、政治的中立を維持するとともに促進し、スポーツの自律性を保護するために行動する。

6. オリンピック・ムーブメントに影響を及ぼす、いかなる形態の差別にも反対し、行動する。

7. オリンピック・ムーブメントにおいて選出されたアスリートの代表がIOCアスリート委員会とともに、オリンピック競技大会と関連する事項のすべてについて、その委員会の最高権威の代表として活動することを奨励し支援する。

8. 男女平等の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する。

9. ドーピングに対する戦いを主導し、いかなる形態の試合の不正操作、および関連する不正行為に対抗する行動をとることにより、クリーンな選手とスポーツの高潔性を保護する。

10. 選手への医療と選手の健康に関する対策を促し支援する。

11. スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する。

12. スポーツ団体および公的機関による、選手の社会的、職業的将来を整える努力を促し、支援する。

13. スポーツ・フォア・オールの発展を促進し支援する。

14. 環境問題に対し責任ある関心を持つことを奨励し支援する。またスポーツにおける持続可能な発展を奨励する。そのような観点でオリンピック競技大会が開催されることを要請する。

15. オリンピック競技大会の有益な遺産を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する。

16. スポーツと文化および教育を融合させる活動を促し支援する。

17. 国際オリンピック・アカデミー(IOA)の活動およびオリンピック教育に取り組むその他の機関の活動を促し支援する。

18. 安全なスポーツを奨励し、あらゆる形態のハラスメントおよび虐待からアスリートを保護することを促進する。

《規則2付属細則》
1. IOC理事会は理事会が適切であると認める条件において、地域、大陸または世界規模の国際総合競技大会をIOCの後援とすることができる。後援の条件は、それらの大会がオリンピック憲章を遵守して開催され、IOCの承認する協会またはNOCの管理のもとで開催されること、また関係IFの支援を受け、その技術面の規則に則っていることである。

2. IOC理事会は、その他のイベントに対しても、オリンピック・ムーブメントの目的と合致していることを条件に、IOCの後援とすることができる。

3 IOCによる承認
1. IOCはオリンピック・ムーブメントの構成員に対し 正式な承認を与えることができる。

2. IOCは、IOCの使命と役割に結びつく活動をする国内スポーツ団体をNOCとして承認することができる。IOCはまた、大陸または世界的規模で組織されるNOCの連合体を承認することができる。すべてのNOCとNOCの連合体は、可能な場合には法人格を所有するものとする。すべてのNOCとNOCの連合体はオリンピック憲章を遵守しなければならず、それらの定款はIOCの承認を得なければならない。

3. IOCは、IFとIFの連合体を承認することができる。

4. IFの連合体またはNOCの連合体を承認することは、それぞれのIFまたはNOCがIOCと直接交渉する権利にいかなる影響も及ぼさず、また、逆にIOCがそれぞれのIFまたはNOCと直接交渉する権利にいかなる影響も及ぼさない。

5. IOCは国際的な規模で運営され、定款と活動がオリンピック憲章に則っているスポーツとつながりを持つ非政府組織を承認することができる。

6. いずれの場合も、承認に伴う帰結についてはIOC理事会が決定を下す。

7. IOCによる承認には、暫定的なものと全面的なものとがある。暫定的な承認と取り消しについては、IOC理事会がその期間を含め決定する。IOC理事会はまた、暫定承認失効の条件について定めることができる。正式承認またはその取り消しについては、IOC総会が決議する。承認手続きのすべての詳細は、IOC理事会が定める。

4 オリンピック・コングレス
 オリンピック・コングレスは、IOCが定める間隔を置いて開催され、オリンピック・ムーブメントの構成員の代表が集う。コングレスはIOC会長により招集され、その役割は諮問である。

《規則4付属細則》
1. オリンピック・コングレスはIOC総会の決議のもと、IOC会長が招集する。IOC総会が開催の期日と場所を決定し、IOCが組織運営する。IOC会長は議長を務め、その手続きを定める。

2. オリンピック・コングレスは、IOC委員およびIOCの名誉会長、名誉委員、栄誉委員IFとNOCの代表により構成される。また、IOCの承認する組織の代表を加えることができる。さらに、個人の資格または組織の代表の立場で招待される選手と個人もオリンピック・コングレスに出席する
3. オリンピック・コングレスの審議事項と議事日程については、IOC理事会がIFおよびNOCと協議の上、定める。

5 オリンピック・ソリダリティー
 オリンピック・ソリダリティーの目的は、選手育成プログラムのためにNOCを援助することにある。特に援助を最も必要としているNOCを対象とする。援助は必要に応じIFの技術面での支援を得て、IOCとNOCが共同で策定するプログラムの形式をとる。

《規則5付属細則》
1. オリンピズムの根本原則を奨励すること
2. オリンピック競技大会に参加する選手とチームの準備においてNOCを支援すること
3. 選手とコーチの技術面での競技知識を豊かにすること
4. NOC、IFと協力し、奨学金制度などにより、選手とコーチの技術水準を向上させること
5. スポーツの運営に携わる人材を養成すること
6. 特にオリンピック教育とスポーツの普及活動を通じ、上記の目的を達成しようとする組織と法人に協力すること
7. 必要に応じ、国内の組織、または国際的な組織と協力し、簡素で、機能的かつ経済的なスポーツ施設をつくること
8. NOCが公認または後援する国内、地域、大陸規模の競技大会の組織運営を支援すること。また、地域および大陸での競技大会に向けた選手団の編成、派遣準備、参加についてNOCを援助すること
9. NOCによる2国間あるいは多国間協力プログラムを奨励すること
10. 各国の政府と国際機関に対し、スポーツを政府開発援助(ODA)に含めるよう働きかけること
11. 難民であるアスリートを支援すること
上記のプログラムは、オリンピック・ソリダリティー委員会により運営される。

6 オリンピック競技大会
1. オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない。大会にはNOCが選抜し、IOCから参加登録申請を認められた選手が集う。選手は当該IFの技術面での指導のもとに競技する。

2. オリンピック競技大会は、オリンピアード競技大会とオリンピック冬季競技大会からなる。雪上または氷上で行われる競技のみが冬季競技とみなされる。

《規則6付属細則》
1. オリンピアードは連続する4つの暦年からなる期間である。それは最初の年の1月1日に始まり、4年目の年の12月31日に終了する。

2. オリンピアードは、1896年にアテネで開催された第1回オリンピアード競技大会から順に連続して番号が付けられる。第29次オリンピアードは2008年1月1日に始まった。

3. オリンピック冬季競技大会は、開催順に番号が付けられる。

7 オリンピック競技大会とオリンピック資産に関する権利
1. オリンピック・ムーブメントのリーダーとして、IOCはムーブメントの価値を高める責任がある。またIOCは、オリンピック競技大会の組織運営と大会普及の努力に対し、物質的支援を提供する責任がある。さらにIOCはIF、NOC、選手によるオリンピック競技大会に向けた準備に対し支援する責任がある。IOCは、オリンピック競技大会およびオリンピック資産に関わる、本規則の定めるすべての権利の所有者である。このような権利は、上記の目的を果たすため収入を生み出す可能性を有する。この権利とオリンピック資産のすべてに対し全関係者による最大限の保護努力が提供され、その活用がIOCにより承認されることは、オリンピック・ムーブメントおよびそのような収入から恩恵を受けるその構成員にとり、最も利益にかなう。

2. オリンピック競技大会はIOCの独占的な資産であり、IOCはオリンピック競技大会に関するすべての権利を所有する。特に(i)オリンピック競技大会の組織運営、活用、マーケティング、(ii)メディアが使用するためのオリンピック競技大会の静止画像と動画の撮影を許可すること、(iii)オリンピック競技大会の音声・映像での収録を登録すること、(iv)放送、送信、再送信、再生、表示、伝播、現存するものであれ将来開発されるものであれ、いかなる方法においてもオリンピック競技大会を音声・映像の登録または収録の具体化による作品や信号を一般の人々に提供すること、あるいは一般の人々に連絡すること。IOCのオリンピック競技大会に関する権利はそれらに限定されない。

3. IOCはオリンピック競技大会、大会の各試合および競技パフォーマンスに関するデータへのアクセスと、データの使用について、それぞれ条件を定めるものとする。

4. オリンピック・シンボルとオリンピックの旗、モットー、讃歌、オリンピックと特定できるもの(「オリンピック競技大会」と「オリンピアード競技大会」を含むがそれらに限らない)、名称、エンブレム、聖火およびトーチは以下の規則8~14が定義する通り、さらに、IOC、NOCおよび/またはOCOGによりオリンピック競技大会に関連して公認されたその他の音楽作品、音声・映像作品またはその他の創作品や人工物は、集合的にあるいは単独で便宜上、「オリンピック資産」と呼ぶことができる。オリンピック資産に関するすべての権利、また、その使用についてのすべての権利は、収益確保の目的であれ、商業的な目的であれ、広告の目的であれ、独占的にIOCに帰属する。IOCはそのような権利の全体または一部について、IOC理事会の定める条件により、ライセンス使用権を与えることができる。

8 オリンピック・シンボル
 オリンピック・シンボルは、単色または5色の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなり、単独で使用されるものを指す。5色のカラー版での使用では、左から順に青、黄、黒、緑、赤とする。輪は以下に示すグラフィックスのように結合し、左から順に上段に青、黒、赤の輪を、下段には黄 緑の輪を配置する。オリンピック・シンボルはオリンピック・ムーブメントの活動を表すとともに、5つの大陸の団結、さらにオリンピック競技大会に全世界の選手が集うことを表現している。

9 オリンピック旗
 オリンピック旗は白地で縁なしとする。中央には5色のオリンピック・シンボルを配置する。

10 オリンピック・モットー
 オリンピックのモットーである「より速くより高くより強く(Citius-Altius-Fortius)」は、オリンピック・ムーブメントの大志を表現している。

11 オリンピック・エンブレム
 オリンピック・エンブレムは、オリンピック・リングに他の固有の要素を結びつけた統合的なデザインである。

12 オリンピック讃歌
 オリンピックの讃歌は、スピロス・サマラスが作曲した「オリンピック讃歌」という題名の音楽作品である。

13 オリンピック聖火とオリンピック・トーチ
1. オリンピック聖火は、IOCの権限のもとにオリンピアで採火される。

2. オリンピック・トーチは、IOCが承認したオリンピック聖火を燃焼させるための運搬用のトーチまたはそのレプリカである。

14 オリンピックの名称
 オリンピックの名称とは、オリンピック競技大会、オリンピック・ムーブメント、またはその構成要素に結び付く、または関連する、視覚的表現、あるいは音声による表現を指す。

《規則7-14付属細則》
1. 法的保護
1.1 IOCはオリンピック競技大会およびすべてのオリンピック資産に関する権利をIOCのために法的に保護する目的で、国内においても国際的にも適切なあらゆる手段を講じることができる
1.2 各NOCは、規則7-14および規則7-14付属細則が自国内で遵守されること ついて、IOCに対し責任を持つ。各NOCは、そのような規則と付属細則に違反するオリンピック資産の使用を禁止するため、適切な手段を講じるものとする。各NOCはまた、IOCの利益のため、IOCのオリンピック資産の保護に努めるものとする。

1.3 国内法、商標登録またはその他の法律文書が、オリンピック・シンボル、またはその他のオリンピック資産の法的保護をNOCに許可する場合でも、NOCがそのことで得られる権利を行使できるのは、オリンピック憲章に従い、IOCの指示に従う場合に限られる。

1.4 NOCは、オリンピック資産の法的保護を得ることについて、いつでもIOCに対し支援を要請することができ、また、そのような問題で第三者と争いが生じた場合には、その解決のため IOCに支援を求めることができる。

1.5 IOCは、オリンピック資産の法的保護を得ることについて、いつでもNOCに対し支援を要請することができ、また、そのような問題で第三者との争いが生じた場合には、その解決のためNOCに支援を求めることができる。

2. IOCによるオリンピック資産の使用、IOCに許可された第三者もしくはライセンス使用権を与えられた第三者によるその使用
2.1 IOCは1つまたは複数のオリンピック・エンブレムを創作し、自らの裁量で使用することができる。

2.2 オリンピック・シンボル、オリンピック・エンブレム、その他のIOCのオリンピック資産は、IOCが利用できるほか、以下の条件を満たすことを条件に、IOCが権限を与えた個人がNOCのある国において利用することができる。

2.2.1 そのような利用はスポンサー契約、サプライヤー契約および以下の付属細則2.2.2に明記されるものを除くマーケティング活動に関して、当該NOCの利益を大きく損なうことがあってはならない。利用の決定についてはIOCがNOCと協議のもとに行う。NOCはそのような利用による純益の一部を受け取るものとする。

2.2.2 NOCはすべてのライセンス契約において、そのような利用での税金と経費を差し引いた純益の半分を受け取るものとする。NOCはそのような利用について、事前に通知を受ける。

2.3 IOCは自らの裁量で、オリンピック競技大会の放送会社に対し、大会の放送宣伝目的で、オリンピック・シンボル、IOCのオリンピック・エンブレム、その他のIOCとOCOGのオリンピック資産の使用を許可することができる。このような許可に関しては本付属細則2.2.1と2.2.2の規定は適用されない。

3. オリンピック・シンボル、オリンピックの旗、モットー、讃歌の使用
3.1 IOCは本付属細則2.2に従い自らの裁量でオリンピック・シンボル、およびオリンピックの旗、モットー、讃歌を使用することができる。

3.2 NOCは非営利活動に限りオリンピック・シンボル、およびオリンピックの旗、モットー、讃歌を使用することができる。ただし、そのような使用はオリンピック・ムーブメントの発展に寄与すること、その尊厳を損なわないこと、さらにIOC理事会による事前の承認を得ることが条件となる。

4. NOCまたはOCOGによるオリンピック・エンブレムの創作と使用
4.1 NOCまたはOCOGはIOCが承認した場合、オリンピック・エンブレムを創作することができる。

4.2 IOCはオリンピック・エンブレムのデザインについて 他のオリンピック・エンブレムと異なる固有のものであると判断した場合に承認することができる。

4.3 オリンピック・エンブレムの中に占めるオリンピック・シンボルの面積は、エンブレム全体の3分の1の大きさを超えてはならない。また、オリンピック・エンブレムの中のオリンピック・シンボルは全体を完全に表していなければならず、いかなる修正も加えてはならない。

4.4 上記に加え、NOCのオリンピック・エンブレムは、以下の条件を満たさなければならない
4.4.1 エンブレムは当該NOCの国との結びつきが明確に認識できるようなデザインでなければならない。

4.4.2 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、当該NOCの国の国名、あるいは国名の省略形に限定してはならない。

4.4.3 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、時間的な限定につながらないようにするため、オリンピック競技大会、あるいは特定の日付、行事と関連づけてはならない。

4.4.4 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、普遍的あるいは国際的であるかのような印象を与えるモットーや名称、その他の総称的表現を含んではならない。

4.5 OCOGのオリンピック・エンブレムは、上記の条項4.1、4.2、4.3の規定に加え、以下の条件を満たさなければならない。

4.5.1 エンブレムは当該OCOGが組織運営するオリンピック競技大会との結びつきが明確に認識できるようなデザインでなければならない。

4.5.2 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、当該OCOGの国の国名、あるいは国名の省略形に限定してはならない。

4.5.3 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、普遍的あるいは国際的であるかのような印象を与えるモットーや名称、その他の総称的表現を一切含んではならない。

4.6 上記の規定が発効する以前にIOCが承認したオリンピック・エンブレムについては、そのまますべて有効とする。

4.7 NOCのオリンピック・エンブレムはNOCがその国内において、いつでも可能な限り登録できる、つまり法的に保護しやすいものでなければならない。NOCはIOCの承認後6カ月以内に、そのようなエンブレムの登録を完了し、登録証明をIOCに提出しなければならない。NOCが自身のオリンピック・エンブレムについて最善を尽くして保護せず、そのような保護についてIOCに通知しなかった場合には、IOC はエンブレムの承認を取り消すことができる。同様に、OCOGはIOCの指示に従い、自身のオリンピック・エンブレムを保護しなければならない。NOCとOCOGによる保護は、IOCに対抗するものであってはならない。

4.8 宣伝広告、商業的な目的、あるいは営利目的でのオリンピック・エンブレムの使用は、以下の付属細則4.9および4.10の規定で明記する条件を満たさなければならない。

4.9 NOCまたはOCOG が、それぞれのオリンピック・エンブレムを宣伝広告、商業的な目的、あるいは営利目的での使用を望む場合、本付属細則に従わなければならない。同様に、第三者を通じた間接的なエンブレムの使用を望む場合には、NOCまたはOCOGはそのような第三者に、確実に付属細則を遵守させなければならない。

4.10 OCOGが締結したものを含め、すべての契約または取り決めには、当該NOCによる署名もしくは承認が必要であり、かつ以下の原則が適用されるものとする。

4.10.1 NOCのオリンピック・エンブレムの使用は、当該NOCの国内に限り有効である。そのようなオリンピック・エンブレムと、その他のオリンピズムに関係するシンボル、エンブレム、マークおよびNOCの名称は、他のNOCの国内で宣伝広告、商業的な目的、あるいは営利目的で使用することはできない。ただし、後者が事前に書面により許可した場合は、その限りではない。

4.10.2 同様に、OCOGのオリンピック・エンブレムおよびその他のオリンピズムに関係するシンボル、エンブレム、マーク、OCOGの名称はいかなるNOCの国内でも宣伝広告、商業的な目的、あるいは営利目的で使用することはできない。ただし、当該NOCが事前に書面により許可した場合は、その限りではない。

4.10.3 OCOGが結ぶ契約の有効期限は、どのような場合も、当該オリンピック競技大会の開催年の12月31日を越えてはならない。

4.10.4 オリンピック・エンブレムの使用は、オリンピック・ムーブメントの発展に寄与するものでなければならず、その品位を損なうものであってはならない。オリンピック憲章の定めるオリンピズムの根本原則、またはIOCの役割と相容れない場合には、製品あるいはサービスをオリンピック・エンブレムと関連づけるこ とは禁止される。

4.10.5 NOCまたはOCOGは、IOCの要請があれば、自身が当事者となっている契約書のコピーを提出しなければならない。

5. 郵便切手
 IOCは当該国の権限を有する機関がNOCと協力し、オリンピック・シンボルを切手に使用することを奨励する。そのような機関はIOCが定めた条件に従いIOCと連携し切手を発行する。

6. オリンピック競技大会に関連して制作を委託された作品
 開催国のOCOGとNOCは、オリンピック競技大会に関連して制作を委託された音楽作品、映像・音声作品、その他の創作品や人工物の著作権の所有者はIOCであると定める手続きを、IOCが満足できるよう確実に行わなければならない。

         オリンピック憲章2019年版・英和対訳(2019年6月26日から有効)より(「8. オリンピック・シンボル*」の図は省略)。


オリンピック憲章
おりんぴっくけんしょう
Olympic Charter

1914年に起草され、1925年に制定されたオリンピックの原則を記した規定である。それまで、IOC(国際オリンピック委員会)はクーベルタンの意見と総会の協議で案件を処理していた。1948年に「オリンピック規約・規則」と改称されたが、1978年の大改定で元のオリンピック憲章という名称に戻った。しかし、その編成の根本はほとんど変わっていない。

 憲章はオリンピズムの根本原則、規則、付属細則を成文化している。オリンピズムの根本原則は別欄のとおりであるが、要約すると、オリンピックの目的を、スポーツの基礎である肉体的、道義的性質の発展を推進し、スポーツを通じ相互理解の増進と友好の精神によって若人(わこうど)たちを教育し、それによってよりよい、より平和な世界の建設に協力することとしている。

 オリンピック大会は4年ごとに開かれ、大会はすべての国の競技者を公平、平等に参加させる。大会を開催する栄誉は都市に与えられ、その都市の選定はIOCの専権とする。オリンピック・シンボル、旗、標語(より速く、より高く、より強く)、讃歌はIOCの独占所有物である。オリンピック・シンボルは、5個の互いに組み合わされた輪、すなわち青、黄、黒、緑、赤が左から右へこの順番で並ぶ。オリンピック大会は、個人やチームの間で競われるものであり、国と国の間で競われるものではない。オリンピックの賞では、一等賞は銀台に金メッキしたメダル、二等賞は銀メダル、三等賞は赤銅メダル、また第1位から第8位までに賞状を授与することになっている。

 アマチュアリズムとの関係からいつも問題となる参加資格については、1967年の改定でアマチュアという文言をなくし、各IF(国際競技連盟International Sports Federation)のアマチュア規定が相互に不一致であっても、その規定に任せることとなった。また、各IFの定める参加資格を尊重するため、プロの参加も全面的に解禁となっている。ただし、その規定はIOCの承認が必要であって、比較的広くとらえようとするIFの一つであるFIFA(国際サッカー連盟)などの参加資格との調整が問題になる場合が多い。

[鈴木良徳]

その後の動き

オリンピック憲章は、IOCの最高機関である総会の権限により改正され、2019年11月時点の最新版は、2019年6月26日から有効のものである。

[編集部 2019年11月20日]

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百科事典マイペディア 「オリンピック憲章」の意味・わかりやすい解説

オリンピック憲章【オリンピックけんしょう】

オリンピックに関するすべての取り決めを条文にしたもの。1925年にプラハの第23次国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定された。オリンピック運動の目的,エンブレム,国際オリンピック委員会の組織,権限,会議,国内オリンピック委員会(NOC)の権限,聖火,開閉会式,競技プログラム,オリンピック旗,選手宣誓の内容から表彰式の運営に至るまで,6章61条及び細則で細かく規定している。条文は不変ではなく,情勢によって改訂されており,競技種目の追加と整理,オリンピックのありかたなどをめぐって憲章改正を迫る動きは常にある。
→関連項目アマチュアリズム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オリンピック憲章」の意味・わかりやすい解説

オリンピック憲章
オリンピックけんしょう
Olympic Charter

オリンピック競技大会に関する基本的事項を定めた規程。 1925年プラハで開かれた国際オリンピック委員会 IOCの会議で制定され,以後幾度か改定と増補を行なっている。根本原則,第1章オリンピック・ムーブメント,第2章国際オリンピック委員会,第3章国際競技連盟,第4章国内オリンピック委員会,第5章オリンピック競技大会および付則から成り立っている。 1998年,2002年開催のソルトレークシティー・オリンピック冬季競技大会の招致活動で IOC委員への買収工作が明らかになったのをうけ,1999年 IOC臨時総会は IOC委員によるオリンピック招致都市訪問を全面的に禁止するなど大幅な憲章の改定を断行した。

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世界大百科事典(旧版)内のオリンピック憲章の言及

【オリンピック】より

…オリンピックの理想を追求するオリンピック運動の原則をオリンピズムOlympismと呼ぶ。
[オリンピック憲章]
 IOCのオリンピック憲章Olympic Charterは,第1章の〈根本原則〉で,オリンピック運動の目的を次のように定めている。(1)スポーツの基調となる身体的・道徳的資質の発達を促進する。…

※「オリンピック憲章」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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