国際オリンピック委員会(読み)こくさいおりんぴっくいいんかい(英語表記)International Olympic Committee 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際オリンピック委員会」の意味・わかりやすい解説

国際オリンピック委員会
こくさいおりんぴっくいいんかい
International Olympic Committee 英語
Le Comité International Olympique フランス語

近代オリンピックを主催する機関。略称はIOC本部スイスローザンヌ。1894年6月23日にパリ大学ソルボンヌ講堂でクーベルタン発議で結成された。オリンピック大会を運営し、オリンピック憲章の根本原則であるオリンピック精神と理想を世界に広めようと設立された国際的組織である。IOCは、オリンピック大会およびオリンピックに関係するあらゆる問題の最終決定機関である。すなわち、出場選手の資格決定、除名、失格、追放などの処罰はIOCに権限がある。しかし個々の競技の技術的統制については、それぞれの国際競技連盟IF)にその権限を委任する。

 IOCはIOC委員が運営にあたる。委員は1国1地域最大1名が原則であるが、オリンピックに貢献した国・地域からは例外が認められる。日本は1938年(昭和13)から2名が認められていたが、2021年(令和3)9月時点では3名となっている。また2011年末にオリンピック憲章に定められた年齢制限で委員を退任した猪谷千春(いがやちはる)は名誉委員となっている。2021年9月時点で、IOC委員は102名、IOCが承認する国内オリンピック委員会(NOC)をもつ国・地域は206あり、日本オリンピック委員会JOC)もこれにあたる。

 IOCが直接主催する会議には理事会、総会および特別総会、コングレス(全体会議)がある。理事会は随時開催され、IOCから日常業務遂行のための権限を委任され、懸案の諸問題を解決する。財務、参加資格などの諮問機関を有する。総会は最高の決定機関で通常年1回であるが、オリンピック開催年には年2回となる。特別総会は特別な議題もしくは緊急に解決を要する際にのみ招集される。コングレスはオリンピックの将来のあり方を討議するいわばオリンピックの理想追求のための会議で、1894年にパリで第1回が開かれて以来、不定期に開催されている。

 IOCの歴代会長は1894年から1896年までギリシアのビケラスDemetrius Vikelas(1835―1908)、1896年から1925年までフランスのクーベルタン、1925年から1942年までベルギーのラトゥールHenri de Baillet-Latour(1876―1942)、1946年から1952年までスウェーデンのエドストレームJ. Sigfrid Edström(1870―1964)、1952年から1972年までアメリカのブランデージ、1972年から1980年までアイルランドのキラニンLord Killanin(1914―1999)、1980年から2001年までスペインのサマランチ、2001年から2013年までベルギーのロゲJacques Rogge(1942―2021)と続き、2013年からはドイツのバッハThomas Bach(1953― )がその職にある(1942年から1946年まではラトゥールの急死後、副会長のエドストレームが代行を務めた)。日本からの初のIOC委員は嘉納治五郎(かのうじごろう)で、清川正二(きよかわまさじ)(1913―1999)が1979年から1983年まで、猪谷千春が2005年から2009年までIOC副会長を務めた。

 1999年には、ソルト・レーク・シティ冬季大会(2002年開催)などオリンピック開催地の決定にあたり、IOC委員が開催立候補地の委員会より金品を受け取ったなどとされる、いわゆる「IOC疑惑」が起こり、1999年3月の臨時総会で6名の委員を追放、4名が辞任した。これにより、IOCのあり方を検討するIOC倫理委員会および改革委員会であるIOC2000委員会が発足。1999年12月の臨時総会では、オリンピック開催立候補地へのIOC委員訪問の禁止、新任委員の定年を70歳に引き下げるなど、IOC2000委員会が提案した50の改革案が採択された。

[鈴木良徳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際オリンピック委員会」の意味・わかりやすい解説

国際オリンピック委員会
こくさいオリンピックいいんかい
International Olympic Committee; IOC

オリンピック競技大会を主催する組織。本部はスイスのローザンヌ。 1894年6月 23日に P.クーベルタンを中心にパリで結成された。初代会長はギリシアの D.ビケラス。オリンピック競技大会を4年ごとに開催すること,その開催都市を選定することを主要活動とし,大会のテレビ放映権料,スポンサー契約料を基金に経済的に恵まれない国へのスポーツ援助を進め,オリンピック・ムーブメントを世界に広げることなどを目的とする。また国際連合と協調し,大会開催中は全世界に戦争行為の中止を呼びかける活動も行なう。 IOCは総会,理事会,会長の三つの機関からなり,そのうち最高機関である総会は 1999年の組織改革により最大 115人 (個人資格 70人,国際競技連盟 IF代表 15人,国内オリンピック委員会 NOC代表 15人,現役選手 15人) の IOC委員 (任期8年,70歳定年) で構成される。おもな任務はオリンピック憲章の採択,修正および解釈など。理事会は会長,副会長4人,理事6人からなり,総会によって選出される。 IOCの任務および業務の管理にあたる。会長は総会にて IOC委員のなかから選出され,任期8年,1回にかぎり再選 (任期4年) が許される。 IOCの代表者として IOCの全活動を統轄する。

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