田中英光(ひでみつ)の中編小説。文壇へのデビュー作で、1940年(昭和15)9月『文学界』に発表。同年高山書院刊。ロサンゼルスでのオリンピック大会に向かう船中で知り合った女子選手との恋を回想的に描いたこの小説は、戦前の代表的な青春小説の一つになっている。「健康な肉体と柔らかな感性」とが、恋を知ることでどのような反応を示すことになるかを、主人公の不安と焦燥、懐疑と自虐を通して具体的に追求し、青春期固有の内的ドラマを鮮やかな形で形象化している。原題は『杏(あんず)の実』であったが、太宰治(だざいおさむ)の言によって改められた。
[島田昭男]
『『オリンポスの果実』(新潮文庫)』
…35年からは兵役の期間等を除き,足かけ8年にわたって朝鮮にあり,会社勤めのかたわら朝鮮文人協会の組織にかかわった。オリンピック参加の体験を素材にした青春小説《オリンポスの果実》(1940)によって池谷信三郎賞を受ける。戦後は共産党に入党,沼津地区委員長となるが,1年ほどで離党,《地下室から》(1948)などで,戦後の革命運動を内部から批判的に告発した。…
※「オリンポスの果実」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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