日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーセン」の意味・わかりやすい解説
オーセン
おーせん
Ivar Andreas Aasen
(1813―1896)
ノルウェーの言語学者。古い文化の伝統に富む南メレ県に生まれる。父の農場の仕事に追われて独学。18歳で国民学校の教師になってから各地を旅行し、ことに地方文化と方言の研究に心を傾けた。当時ノルウェーは久しいデンマークの支配から脱して自治権を得、それが独立運動に盛り上がりつつある時期で、アスビョルンセンらは民話収集に努めたが、オーセンは民衆の間に伝わる光輝ある古いノルウェー語の復活に意を用い、当時の官用語だったデンマーク語とは別に、独立した祖国にふさわしい文学語を創成すべく努力した。『ノルウェー民衆語文法』(1848)、『ノルウェー語辞典』(1856)などはその成果で、それがいわゆるランスモール(いまは新ノルウェー語ともよばれる)創成となり、多くの詩人や作家にも用いられて大きな勢力となった。彼自身も少数ながら格調高い詩や散文を書き、民話の収集もある。
[山室 静 2018年6月19日]