ノルウェー語(読み)のるうぇーご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノルウェー語」の意味・わかりやすい解説

ノルウェー語
のるうぇーご

ノルウェー王国公用語。インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派ノルド諸言語に属する言語で、隣国スウェーデン語、デンマーク語とたいへん近い関係にある。

 音声体系とアクセントはスウェーデン語に類似している。たとえば、母音の直後にp、t、kが存在し、語頭でg、k、skが口蓋(こうがい)化する。また、なだらかな上昇調のアクセント(スウェーデン語では下降調)と、下降後急に上昇するアクセントの2種類を使い分けている。

 ノルウェー国内の言語事情はスウェーデンやデンマークよりも複雑で、現在2種類のノルウェー語が公用語として認められている。1929年以降、公式名称はブークモール(ボークモール)bokmålとニューノシュク(新ノルウェー語)nynorskである。これには歴史的な背景がある。宗教改革ののち、スウェーデンではグスタフ1世(グスタフ・バーサ)、デンマークではクリスティアン3世Christian Ⅲ(1503―1559、在位1534~1559)の時代に聖書が翻訳され、それぞれの国で近代文語が基礎づけられた。それに対しノルウェーでは、デンマークと同君連合の関係にあったためデンマークの文語が採用され、発音はノルウェー風であっても、語彙(ごい)や文法、正書法の点でデンマーク語に倣うようになった。これがリクスモールriksmålとよばれたもので、後のブークモールである。他方、19世紀の国民意識の高まりを背景に、ノルウェー独自の文語を目ざして、イーバル・オーセンIvar Aasen(1813―1896)は、ノルウェー古来の諸方言をもとにランスモールlandsmålをつくりだした。これは弱音節に完全母音を使い、古い二重母音に戻し、文法では名詞に女性を復活させ、借用語や外来語を排除するなど、非常に古風で純粋主義的であった。ランスモールも1885年に公用語の地位を得た。これが後のニューノシュクである。20世紀になってブークモールの正書法が大幅に改められ、ニューノシュクに近づいた。ブークモールはおもにオスロを含む東部で、ニューノシュクは西部で採用されているが、使用人口からみると、ブークモールのほうが圧倒的に優勢であるといってよい。

[福井信子]

『横山民司著『エクスプレス ノルウェー語』(1987・白水社)』『森信嘉著『ノルウェー語文法入門――ブークモール』(1990・大学書林)』『岡本健志著『自習 ノルウェー語文法』(1993・大学書林)』『アラン・カーカー他編、山下泰文他訳『北欧のことば』(2001・東海大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノルウェー語」の意味・わかりやすい解説

ノルウェー語
ノルウェーご
Norwegian language

ノルウェーの国語。使用人口は 400万人以上。ゲルマン語派の北ゲルマン語群に属し,アイスランド語とともにそのなかの西ノルド語群をなす。ノルウェーがデンマークに併合されていた期間 (1380~1814) はデンマーク語が標準語であったが,独立後はそれを基盤としてボークモール (リクスモール) と呼ばれる書き言葉が確立した。そのほかに,本来の姿をとどめる諸方言からつくられたニューノルスク (ランスモール) と呼ばれる書き言葉があり,両者とも公用に認められて勢力を争っている。ノルウェー語の特徴としては単純化された文法組織と,2つの型をもつ高さアクセントがあげられる。

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