改訂新版 世界大百科事典 「カニムシモドキ」の意味・わかりやすい解説
カニムシモドキ
tailless whip-scorpion
カニムシモドキ科Charontidaeに属する節足動物の総称で,ウデムシ科とともに蛛形(ちゆけい)綱中の1目,無鞭類Amblypygiを形成する。第1歩脚は著しく細長くなり歩行時の触覚器官として働く。全体の形がカニムシに似ているので,この名がついた。体長8~25mmで,第2~4歩脚末端に肉盤と呼ばれる吸盤をもち垂直面や天井を歩くこともできる。中央アメリカとその近隣,東南アジア,インド,スリランカ,アフリカ南部,太平洋の南方諸島などに分布し,日本にはいない。倒木や石の下,岩の割れ目,人家の暗所などの湿った場所に生息している。ゴキブリ,コオロギ,バッタなどの昆虫やワラジムシなどを強大な触肢でおさえつけ捕食する。生殖行動は,カニムシ,サソリと似ており,雄が地面につくった精包に精子の塊を入れると,すぐに雌がそれを生殖口に納めることで精子の受け渡しが行われる。雄は第1歩脚と触肢で雌の体に触れ求愛行動を行い,また雌が精子の塊を生殖口に納めた後,雄は精包を食べてしまう。無鞭類の他の1科,ウデムシ科Tarantulidaeのものは,歩脚末端に肉盤のないことで区別でき,またおおむね大型でなかには体長45mmに達する種類もある。無鞭類は世界中で約60種が知られており,この類の化石は古生代石炭紀から出ている。蛛形類中もっともクモ類に近縁と考えられている。
執筆者:松本 誠治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報