カラスシジミ(その他表記)Strymonidia w-album

改訂新版 世界大百科事典 「カラスシジミ」の意味・わかりやすい解説

カラスシジミ
Strymonidia w-album

鱗翅目シジミチョウ科の昆虫。やや小型で開張2.5~3.5cm。翅の表面は暗褐色なのでこの名がある。後翅裏面にW字形の白色条があり,学名の種小名はこれを表している。ヨーロッパから中国北部,朝鮮半島を経て日本まで分布する。日本では北海道,本州,九州に見られ,本州西部から九州にかけては産地がごく限られている。年1回発生し,成虫暖地では5月後半,寒地では7月ころ羽化する。一般に食餌のハルニレオヒョウなどのニレ科植物を含む落葉広葉樹林にすんでいるが,サクラ類やスモモなどのバラ科植物も食べるので,ときにこれらの植物が栽培されている人家周辺にも発生することがある。成虫はアマニュウなどのセリ科植物の花によく集まる。幼虫は食樹の花や若い果実を好んで食べる。雌は食樹の枝や幹に産卵し,卵で越冬する。近縁のミヤマカラスシジミS.meraは北海道南西部から九州にかけて,リンゴシジミS.pruniは北海道に,ベニモンカラスシジミS.iyonisは本州中西部と四国に分布している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラスシジミ」の意味・わかりやすい解説

カラスシジミ
Strymonidia w-album

鱗翅目シジミチョウ科のチョウ。前翅長 17mm内外。翅表は黒褐色。裏面は表面より明るい褐色で,前後翅に細い白色帯があるが,後翅のそれはW字形になっている。後翅には尾状突起があるが雄では非常に短い。北海道,本州,九州,サハリン,千島列島南部,朝鮮,中国北部,ヨーロッパに分布し,日本産は亜種 S. w. fentoniという。近縁のミヤマカラスシジミ S. meraは本種に似るが,翅は丸みを帯び,後翅裏面の白色帯は屈曲が弱くW字形にならず,尾状突起は長い。日本固有種で北海道,本州,四国,九州に分布する。ベニモンカラスシジミ S. iyonisは前翅長 12mm内外,翅は本種より暗色で,裏面白色帯もより細く,前翅表には橙赤色紋があり,尾状突起は短い。本州,四国に産し,分布は局地的である。また北海道には淡色で前後翅に橙赤色斑のあるエゾリンゴシジミ S. pruniを産する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラスシジミ」の意味・わかりやすい解説

カラスシジミ
からすしじみ / 烏小灰蝶
white letter hairstreak
[学] Strymonidia w-album

昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。ヨーロッパからアジア東部にわたりユーラシアの北部に広く分布する種で、日本では北海道から九州(南部の鹿児島県下まで)に産するが、日本南西部ではその産地は一般に限られている。はねの開張25~30ミリメートル程度。はねの表面は黒褐色、裏面は茶褐色で細い白帯がある。雄の後ろばねの尾状突起は短い。年1回の発生で、寒冷地では7~8月に、暖地では5~6月に成虫が現れる。幼虫の食草はハルニレ、コブニレ、オヒョウなどのニレ類、ときにスモモ、ズミ、サクラ類にもつく。成虫の発見は意外にむずかしいが、前蛹(ぜんよう)期ないし蛹期に、もっとも好む食草のハルニレを探せば、その発見は困難ではない。

白水 隆]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android