日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルニレ」の意味・わかりやすい解説
ハルニレ
はるにれ / 春楡
[学] Ulmus davidiana Planch. var. japonica (Rehd.) Nakai
ニレ科(APG分類:ニレ科)の落葉高木。北海道では英名のエルムelm(ニレ属の総称)の名でよんでいる。高さ30メートル、径1メートルに達する。葉は互生し、倒卵形または楕円(だえん)状倒卵形で長さ6~15センチメートル、幅3~8センチメートル、先はとがり、基部が左右にゆがんだくさび形になるのが特徴。葉表はざらつき、縁(へり)に重鋸歯(じゅうきょし)がある。4月ころ、葉に先だって花を開く。花被片(かひへん)は4枚で淡緑色、雄しべは4本で暗紅紫色、雌しべは1本で花柱は2裂する。果実は翼果で長さ1.5センチメートル、幅約1センチメートル、先端はへこむ。川沿いの低湿地に生え、沖縄を除く日本全土に分布するが、北地に多い。朝鮮半島、中国東北部、ウスリー地方、樺太(からふと)(サハリン)にも分布する。材は建築、器具などに使い、樹皮の繊維は縄として使った。品種のコブニレ(瘤楡)は、樹皮のコルク層が発達して、こぶ状になったものである。
[伊藤浩司 2019年11月20日]