日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンピロバクター腸炎」の意味・わかりやすい解説
カンピロバクター腸炎
かんぴろばくたーちょうえん
近年、新しいヒトの腸炎として世界各地で注目されている疾患。細菌性下痢症の原因菌としては、赤痢菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、コレラ菌、サルモネラ菌などが代表的なものであるが、このカンピロバクター・ジェジュニイCampylobacter jejuniは微好気性のグラム陰性、彎曲(わんきょく)した桿菌(かんきん)で、元来、ウシの流産の原因菌として獣医学領域で重要視されていたものの同類である。
空腸と回腸に病変があって水様性の下痢が1日に数回から十数回に及び、腹痛、発熱、嘔吐(おうと)を伴うことがあり、しばしば粘血便もみられる。下痢は長くて10日間ぐらい持続するので、水分の補給が必要である。エリスロマイシンなどマクロライド系の抗生物質が著効を示すが、セファロスポリン系薬剤などには耐性を示すので、投薬を誤ると症状の消失が長引く。なお、集団発生する場合が多く、行政上、食中毒として扱われる。
[柳下徳雄]