日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガスカール」の意味・わかりやすい解説
ガスカール
がすかーる
Pierre Gascar
(1916―1997)
フランスの作家。小説、ルポルタージュ、エッセイを書く。第二次世界大戦中捕虜となり、ラワ・ルスカ強制収容所に送られる。そこでの体験をもとに、現実と幻想の交錯する独得の文体でルポルタージュ小説『死者の時』(1953)を描き、ゴンクール賞を受けて世に知られる。それ以前に『家具』(1949)、『閉ざされた顔』(1951)、『けものたち』(1953、批評賞受賞)がある。以後、青少年時代を回想する自伝的小説『種子』(1955)、『街の草』(1957)、小説『逃亡者』(1961)、『火の羊』(1963)があり、エッセイ『シメール』(1969)において、現実を基盤とする彼の幻想はその頂点を示した。また、ネルバルG. Nerval、ビュフォンG.L.L. BuffonやフンボルトA. Humboldtなどの評伝もある。
[篠田浩一郎]
『菅野昭正訳『逃亡者』(1979・白水社)』▽『入沢康夫訳『ネルヴァルとその時代』(1984・筑摩書房)』▽『沖田吉穂訳『探検博物学者フンボルト』(1989・白水社)』▽『石木隆治訳『博物学者ビュフォン』(1991・白水社)』