改訂新版 世界大百科事典 「キクガラクサ」の意味・わかりやすい解説
キクガラクサ
Ellisiophyllum pinnatum(Wall.)Makino var.reptans(Maxim.)Yamazaki
山地の林縁のやや湿った所に生えるゴマノハグサ科の多年草。地をはう茎から斜上する葉は深く裂けて唐草模様を思わせる。茎は細長く地表をはい,節ごとに根と1枚の葉をだす。葉は長い柄があり,葉身の長さ2.5~6cm,幅2~5cm。初夏に,葉のわきから細長い花柄の先に,白色の1花を開く。花冠は鐘形で5裂する。蒴果(さくか)は球形,果柄はらせん状に巻いて果実を地中に入れる。冬は地上部が枯れ,茎の先が膨らんで休眠芽を作る。本州の近畿以西,四国に分布する。基本変種のE.pinnatum(Wall.)Makinoは中国西部,ヒマラヤにあり,花はやや大きく,茎はたえず伸長して休眠芽を作らない。
花は放射相称に近く,種子に粘毛が密生する特徴から,ゴマノハグサ科の中でも近縁のもののない特異な植物で,キクガラクサ亜科として区別される。1属1種の珍しい植物である。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報