棊子麵(読み)きしめん

改訂新版 世界大百科事典 「棊子麵」の意味・わかりやすい解説

棊子麵 (きしめん)

うどんの一種。碁子麵とも書く。昔は小麦粉を練って薄くのし,細い竹筒の先で碁石の形に抜き取り,これをゆでて,きな粉を掛けるか,汁で煮て食べた。中国華北の農書《斉民要術》(6世紀前半)にある〈棊子麵〉の形は,〈方棊〉(碁盤の目)に切るとあるが,12世紀初葉には〈玉棊子〉の語が見えるように,方形から円形に変わり,その手法が日本に伝えられた。《庭訓往来》などに見られるのがそれで,信濃の開田村や薩摩では,そば粉でこの形の棊子麵を作ったという。いまでは平うどんを指して〈きしめん〉と呼ぶが,その初見は《料理山海郷》(1750)で,小麦粉を塩なしでこね,幅1.5cmほどの短冊に切り,具に花鰹,ネギを入れるとある。名古屋地方の名物となっており,油揚げ,青味などが加わる。

 このきしめんの語源については,キジの肉を入れたきじめん,あるいは紀州めんのなまった名だともいわれているが,俗説にすぎない。平うどんを関東では〈ひぼかわ〉(《江戸料理集》1674),または〈ひもかわ〉と呼んだ。
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世界大百科事典(旧版)内の棊子麵の言及

【ヌードル】より

…西洋料理のめん類の一種で,細長いリボン状のもの。日本の〈きしめん〉に似ている。小麦粉に塩,水,鶏卵を加えて練り,めん棒で薄くのばしてから1cm幅ほどに切る。…

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