日本大百科全書(ニッポニカ) 「きしめん」の意味・わかりやすい解説
きしめん
きしめん / 棊子麺
麺(めん)類の一種。もともとは小麦粉に水を適量加えてこね、小さくつまんで丸め、押して碁石の形に似たものをつくり、煮たのを棊子麺といったという。次には、うどん作りのように加水小麦粉を麺棒で伸ばし、碁石形に打ち抜いて用いるようになった。
また、きしめんの名称は、紀州(和歌山県)の人がその地方の平打ち麺を名古屋の人に教えたといい、この地方では平打ちうどんをきしめんといっている。つまり、紀州麺から転じたというもの。『料理山海郷(りょうりさんかいきょう)』(1749刊)には、「うどんの粉塩なしにこね常の如(ごと)くふみて薄く打ち、はば五分ほどの短冊(たんざく)にきり汁にてかげんするなり。打粉多くつかえば汁ねばる。打粉少なくして汁多く仕懸けるがよし(下略)」とあり、平打ちうどんのきしめんの作り方を紹介している。江戸後期には、このきしめんに「ひもかわ」の名も用いており柳亭種彦(りゅうていたねひこ)著『用捨箱(ようしゃばこ)』(1841)のなかには、その名称についての論議がある。
[多田鉄之助]