日本大百科全書(ニッポニカ) 「キッサン・サーペー」の意味・わかりやすい解説
キッサン・サーペー
きっさんさーぺー
Hkitsan Sape
1930年代初頭から1940年代にかけてビルマ(現、ミャンマー)文壇を風靡(ふうび)した文学の一潮流。イギリス領植民地時代の行政官ファーニバルJohn. S. Furnivall(1878―1960)の助言に基づき、1928年「ビルマ教育普及協会」が設立される。この協会設立をきっかけとして「キッサン・サーペー」(「時代の要請を探る文学」の意)が誕生したという。キッサン・サーペーは、西欧の教養を身につけた知識層による新しい文学の試みで、当初はビルマ文学の伝統を破壊するものとして手厳しい批判を受ける。しかし簡潔な文体とリアリズム手法は、しだいに人々の心をとらえた。この文学運動により、現代ビルマ(ミャンマー)文学の基礎が確立したといわれる。代表的作家に、テイッパン・マウン・ワTheippan Maung Wa(1899―1942)、テッカトウ・マウン・タン・シンTetkatto Maung Thant Sin(1905―1985)、ゾー・ジーZawgyi(1908―1990)、クタKutha(1908―1976)、ミン・トゥ・ウンMinthuwun(1909―2004)らがいる。
[奥平龍二]