日本大百科全書(ニッポニカ) 「キノア」の意味・わかりやすい解説
キノア
きのあ
quinoa
[学] Chenopodium quinoa Willd.
アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一年草。キヌアともいう。南アメリカアンデス高原地帯で紀元前から栽培され、ボリビア、ペルー、エクアドルでは主食となっている。栽培の高限は4300メートルに及ぶ。新大陸発見後、インドにも導入され、山間部でわずかに栽培されている。形は日本のアカザに似て、高さ1~1.5メートル、多くの太い枝を出す。晩夏、茎頂にアカザに似た花穂をつけ、秋に径2~3ミリメートルの扁円(へんえん)形の果実ができる。品種的分化がみられ、茎葉も果実も紫紅色を帯びるもの、茎葉が緑色で果実が白色のもの、果実が黄色みを帯びるものなどがある。
種子はデンプン質で、わずかにサポニンを含むので一種の苦味があるが、サポニンを含まない品種もできている。種子を粉にしてパン状にして食べ、また粒のまま粥(かゆ)にして食べる。また、一種のビールを醸造する。茎からつくった灰をコカの葉につけて、チューインガムのように噛(か)んで味わう嗜好(しこう)料にも用いられる。ブタやニワトリの飼料にもされる。
[星川清親 2021年1月21日]